さすらいのストライカー「木下康介 (シント=トロイデンVV) インタビュー」Vol.3:ヨーロッパで身に付いたしなやかな逞しさ
木下康介は高校時代にマンチェスターシティの練習に参加することを皮切りに、ドイツ、スウェーデンとヨーロッパで揉まれてきた身長190㎝の大型ストライカーだ。昨年にスウェーデンで13得点という結果を叩き出したこともあり、シント=トロイデンVVに1月に加入し、デビュー戦では得点を記録した。これまでの人生をスパイクの話と共にベルギーの地でたっぷり聞かせてもらった。
小池菊池
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2019/05/12
Vol.2はこちらから
ーー今までずっと日本人がいないチームでプレーされてきたじゃないですか。それが今では木下さんいれて6人(3月上旬の取材時)の日本人選手がいて、スタッフにも日本人がいて、違和感があるんじゃないですか?
木下:もう慣れましたが、最初は不思議な感じでしたよ。僕は日本でプロを経験していないので、新しい雰囲気というか、日本人がいて母国語で喋れるのは海外では珍しいので、本当に新鮮な気持ちです。
ーー良い点もありますよね。こういうボールを出して欲しいなどの意思疎通などもスムーズですよね。
木下:そうですね、もちろんコミュニケーションは取りやすいです。生活面でも、英語でも問題ないですが、日本語の方がもちろんより伝えやすいですし。しかも日本人のメンタリティは外国人とは異なる部分がありますし。
ーー英語はペラペラなんでしたっけ?
木下:困らない程度は話せます。ビジネスでは通用しないレベルですけど。
ーー監督の言っていることは分かるし、コミュニケーションも取れますよね。
木下:そうですね、それは全く問題ないです。
ーー言葉は武器になりますよね。言葉がわかりコミュニケーションを取れる選手に多くチャンスが回ったりしますもんね。
木下:そうですね、やっぱり海外にいる以上は喋れないと。まぁ喋れなくてもサッカーはできますけど、やはりチームスポーツなので、コミュニケーションを取れないというところはあります。
ーーチームメイトの遠藤航選手と冨安健洋選手は日本代表じゃないですか。(その後に鎌田大地選手も日本代表に選出された)シント=トロイデンVVは注目されているチームですし、ここで結果を出せば、代表に呼ばれる可能性が高いじゃないですか。
木下:今はチーム内でスタメンを確保出来ているわけではないので、そこをまずやらないといけないと思っています。
まずは途中出場でもいいので点を取っていきたいです。一歩ずつですね。もちろん日本代表というワードは、スウェーデンにいるよりここにいる方が入ってくると思いますけど、このチームで結果を出さないことには話にならないので。
ーーなるほど。でも、距離としては少し近くなりましたよね。ところで、デビュー戦でヒールキックでゴールを決めたじゃないですか。あれはヒールを狙っていたんですか?
木下:最初は狙ってヒールで打ちましたけど・・・。
ーー結果的にダブルヒールでしたよね。
木下:あれは跳ね返って来たのを押し込みましたが、自分でもよく分かっていなくて。最初のヒールでのシュートが入ってくれれば良かったんですけどね(笑)。でもまぁ、入ったので良かったです。
©STVV
ーー結果が全てというなかで、ストライカーとしてちょっとホッとしたところもあるんじゃないですか?
木下:まぁそうですね、自分の中で点を取れるのは大事なことですので。シーズン途中に加入した選手ですし。あとはあの得点で勝てたというのは大きかったです。
ーーでも今はライバルとなる選手の調子がいいんですよね?
木下:そうですね、彼(ヨハン・ボリ選手)は今、絶対的なポジションに居るので。僕が移籍して来てからすごく点を取り出したんですよ。
ーーライバル心をかき立てたんですかね?
木下:そうなんですかね(笑)。僕が来る前と比べると、倍くらい点を取っていますからね。(木下選手加入前 20 試合 4 ゴール 木下選手加入後*1月18日契約締結から取材日3月6日までで7試合8ゴール)
ーー完全にチームとしては良い状況ですけどね。
木下:そうですね、チームとしては良い状況なので我慢しつつですね。
ーー練習を見ていて思ったんですが、スパイクはアンダーアーマーを履かれていますよね?アンダーアーマーはいつからなんですか?
木下:18歳からです。ドイツに渡ったタイミングとほぼ同じくらいですね。
ーーアンダーアーマーのスパイクはいかがですか?
木下:たぶん僕がドイツへ行く年か、その前年にスパイクを作り出したのかな。新しくサッカーに参入したって聞いていました。
ーーミズノやアディダスを履いてきた中で、初めてアンダーアーマーのスパイクを試された時の感想は?
木下:あんまり覚えてないです。でも、今のところスパイクで困ったことはないんですよ。足に合わないとか、靴擦れするとか、フィットしないとかっていう感覚はこれまでなくて。
アンダーマーと契約してスパイクを頂けるようになってからは、年々新しいモデルが出る度に進化しているなって感じています。
ーー今のスパイクはなんというモデルですか?
木下:マグネティコです。全く靴擦れしないですし、足にそのままピタッとフィットしている感じはありますね。
ーー日本にいた時は固定式のスパイクが多かったと思いますが、やっぱりヨーロッパではミックスソールですか?
木下:そうですね、グラウンドの関係でこっちだとミックスですね。
ーーアンダーアーマーの良いところは?
木下:まぁ、やっぱりスパイクですよね。まずフィット感がいいですし、あとはボールタッチの感覚とかもスパイクと相性が良いなと感じているので、気に入っています。
ーーJリーグのユースではプレーされていましたけど、トップでの経験はないじゃないですか。一度、Jリーグでやってみたいという思いはあるんですか?
木下:そこまでは考えたことはないですね。僕の中で日本に帰るという特別な思いはそこまでないんですけど、チャンスがあればプレーしてみたいです。他の国と同様に、選択肢の一つとして捉えています。
ーーなんだか逞しいです。ベルギーでの生活はどうですか?
木下:今はチームの寮にいるので、外食が多いですね。アパートに移動したら自炊をしたいと思っているところです。
スウェーデンは周辺国とわりと離れているんですけれど、ベルギーはヨーロッパの真ん中なので、周りにフランスやオランダ、ドイツもあって、遊びに行くのは楽しいですよね。
ーー生活の中で、何かこだわりとかありますか?
木下:僕は逆にこだわらないようにしています。もちろん、習慣との境界が難しいところで、食事とかはある程度の知識を持って選んでいますし、バランス良く食べたり、甘いものを食べないようにしたりしています。
その辺は周囲の人から見たらこだわりなのかもしれないですが、僕の中では当たり前なんです。自分の中ではわりとストレスない程度に、あまりストイックになりすぎないようにしています。
練習前後も毎日決まったことはしていなくて、天気によっても体調が違うし、1週間を通して毎日同じ体調ではないので、自分の体の様子を見ながら、日々ストレスがなるべくかからないように臨機応変に生活しています。
ーー本当に自然体という感じですね。しなやかな逞しさを感じます。
木下:たぶん昔の方が色々とこだわっていました。18歳くらいの頃は、こだわりが強かったように思いますが、そのこだわりが習慣になって自分に染み付いて、その中で少しずつ削ぎ落として簡素化されたのかなと。だから、今はあえて意識してやっているものはないですね。
ーーそれが一番強くあるための秘訣なんですかね。
木下:それが一番良いかなと思っています。例えば、試合前に『これがしたい』と思っていても、その時にできなくてストレスになるのが嫌なんです。だったらできる範囲でやれることをと思いますね。
――木下さんが発する自然体なしなやかな逞しさの理由が少しわかったような気がします。ベルギーでも得点を量産されることを期待しています。
(了)
照片:Kikuchi Kohei
STVV(Sint-Truiden 日本官方网站)
https://stvv.jp/
ーー今までずっと日本人がいないチームでプレーされてきたじゃないですか。それが今では木下さんいれて6人(3月上旬の取材時)の日本人選手がいて、スタッフにも日本人がいて、違和感があるんじゃないですか?
木下:もう慣れましたが、最初は不思議な感じでしたよ。僕は日本でプロを経験していないので、新しい雰囲気というか、日本人がいて母国語で喋れるのは海外では珍しいので、本当に新鮮な気持ちです。
ーー良い点もありますよね。こういうボールを出して欲しいなどの意思疎通などもスムーズですよね。
木下:そうですね、もちろんコミュニケーションは取りやすいです。生活面でも、英語でも問題ないですが、日本語の方がもちろんより伝えやすいですし。しかも日本人のメンタリティは外国人とは異なる部分がありますし。
ーー英語はペラペラなんでしたっけ?
木下:困らない程度は話せます。ビジネスでは通用しないレベルですけど。
ーー監督の言っていることは分かるし、コミュニケーションも取れますよね。
木下:そうですね、それは全く問題ないです。
ーー言葉は武器になりますよね。言葉がわかりコミュニケーションを取れる選手に多くチャンスが回ったりしますもんね。
木下:そうですね、やっぱり海外にいる以上は喋れないと。まぁ喋れなくてもサッカーはできますけど、やはりチームスポーツなので、コミュニケーションを取れないというところはあります。
ーーチームメイトの遠藤航選手と冨安健洋選手は日本代表じゃないですか。(その後に鎌田大地選手も日本代表に選出された)シント=トロイデンVVは注目されているチームですし、ここで結果を出せば、代表に呼ばれる可能性が高いじゃないですか。
木下:今はチーム内でスタメンを確保出来ているわけではないので、そこをまずやらないといけないと思っています。
まずは途中出場でもいいので点を取っていきたいです。一歩ずつですね。もちろん日本代表というワードは、スウェーデンにいるよりここにいる方が入ってくると思いますけど、このチームで結果を出さないことには話にならないので。
ーーなるほど。でも、距離としては少し近くなりましたよね。ところで、デビュー戦でヒールキックでゴールを決めたじゃないですか。あれはヒールを狙っていたんですか?
木下:最初は狙ってヒールで打ちましたけど・・・。
ーー結果的にダブルヒールでしたよね。
木下:あれは跳ね返って来たのを押し込みましたが、自分でもよく分かっていなくて。最初のヒールでのシュートが入ってくれれば良かったんですけどね(笑)。でもまぁ、入ったので良かったです。
©STVV
ーー結果が全てというなかで、ストライカーとしてちょっとホッとしたところもあるんじゃないですか?
木下:まぁそうですね、自分の中で点を取れるのは大事なことですので。シーズン途中に加入した選手ですし。あとはあの得点で勝てたというのは大きかったです。
ーーでも今はライバルとなる選手の調子がいいんですよね?
木下:そうですね、彼(ヨハン・ボリ選手)は今、絶対的なポジションに居るので。僕が移籍して来てからすごく点を取り出したんですよ。
ーーライバル心をかき立てたんですかね?
木下:そうなんですかね(笑)。僕が来る前と比べると、倍くらい点を取っていますからね。(木下選手加入前 20 試合 4 ゴール 木下選手加入後*1月18日契約締結から取材日3月6日までで7試合8ゴール)
ーー完全にチームとしては良い状況ですけどね。
木下:そうですね、チームとしては良い状況なので我慢しつつですね。
ーー練習を見ていて思ったんですが、スパイクはアンダーアーマーを履かれていますよね?アンダーアーマーはいつからなんですか?
木下:18歳からです。ドイツに渡ったタイミングとほぼ同じくらいですね。
ーーアンダーアーマーのスパイクはいかがですか?
木下:たぶん僕がドイツへ行く年か、その前年にスパイクを作り出したのかな。新しくサッカーに参入したって聞いていました。
ーーミズノやアディダスを履いてきた中で、初めてアンダーアーマーのスパイクを試された時の感想は?
木下:あんまり覚えてないです。でも、今のところスパイクで困ったことはないんですよ。足に合わないとか、靴擦れするとか、フィットしないとかっていう感覚はこれまでなくて。
アンダーマーと契約してスパイクを頂けるようになってからは、年々新しいモデルが出る度に進化しているなって感じています。
ーー今のスパイクはなんというモデルですか?
木下:マグネティコです。全く靴擦れしないですし、足にそのままピタッとフィットしている感じはありますね。
ーー日本にいた時は固定式のスパイクが多かったと思いますが、やっぱりヨーロッパではミックスソールですか?
木下:そうですね、グラウンドの関係でこっちだとミックスですね。
ーーアンダーアーマーの良いところは?
木下:まぁ、やっぱりスパイクですよね。まずフィット感がいいですし、あとはボールタッチの感覚とかもスパイクと相性が良いなと感じているので、気に入っています。
ーーJリーグのユースではプレーされていましたけど、トップでの経験はないじゃないですか。一度、Jリーグでやってみたいという思いはあるんですか?
木下:そこまでは考えたことはないですね。僕の中で日本に帰るという特別な思いはそこまでないんですけど、チャンスがあればプレーしてみたいです。他の国と同様に、選択肢の一つとして捉えています。
ーーなんだか逞しいです。ベルギーでの生活はどうですか?
木下:今はチームの寮にいるので、外食が多いですね。アパートに移動したら自炊をしたいと思っているところです。
スウェーデンは周辺国とわりと離れているんですけれど、ベルギーはヨーロッパの真ん中なので、周りにフランスやオランダ、ドイツもあって、遊びに行くのは楽しいですよね。
ーー生活の中で、何かこだわりとかありますか?
木下:僕は逆にこだわらないようにしています。もちろん、習慣との境界が難しいところで、食事とかはある程度の知識を持って選んでいますし、バランス良く食べたり、甘いものを食べないようにしたりしています。
その辺は周囲の人から見たらこだわりなのかもしれないですが、僕の中では当たり前なんです。自分の中ではわりとストレスない程度に、あまりストイックになりすぎないようにしています。
練習前後も毎日決まったことはしていなくて、天気によっても体調が違うし、1週間を通して毎日同じ体調ではないので、自分の体の様子を見ながら、日々ストレスがなるべくかからないように臨機応変に生活しています。
ーー本当に自然体という感じですね。しなやかな逞しさを感じます。
木下:たぶん昔の方が色々とこだわっていました。18歳くらいの頃は、こだわりが強かったように思いますが、そのこだわりが習慣になって自分に染み付いて、その中で少しずつ削ぎ落として簡素化されたのかなと。だから、今はあえて意識してやっているものはないですね。
ーーそれが一番強くあるための秘訣なんですかね。
木下:それが一番良いかなと思っています。例えば、試合前に『これがしたい』と思っていても、その時にできなくてストレスになるのが嫌なんです。だったらできる範囲でやれることをと思いますね。
――木下さんが発する自然体なしなやかな逞しさの理由が少しわかったような気がします。ベルギーでも得点を量産されることを期待しています。
(了)
照片:Kikuchi Kohei
STVV(Sint-Truiden 日本官方网站)