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日本女子、打倒中国ならず銀メダルも東京五輪へ前向き。伊藤美誠「勝ち切る力をつけてこの場所に帰ってきたい」【JA全農 ITTF 卓球ワールドカップ団体戦・決勝】

JA全農 ITTF 卓球ワールドカップ団体戦 2019 TOKYO(11月6~10日/東京体育館)は10日、女子の決勝戦が行われ、日本(世界ランク2位)は中国(同1位)に0-3で敗れ、銀メダル終わった。これで大会の全日程が終了。男女ともに圧倒的な強さを誇る“卓球王国”に阻まれ、自国開催で日本卓球界に最高のドラマを生み出すことは叶わなかった。だが各選手、試合後の取材ではすでに東京五輪を見据えて前を向いており、悔しさ以上に充実した表情を浮かべていたのは印象深い。そんな彼女たちの姿は、筆者の目にはなんとも頼もしく映っていた。

图标1482131451808佐藤校长 | 2019/11/17
5日間に及ぶ本大会もついにクライマックス。卓球女子の国の世界一が決定する瞬間が訪れた。

対戦カードは、初優勝を狙う日本と、大会9連覇をかけて臨む中国。日本は「最低で優勝、最高で中国に勝つ」ことを目標に掲げてここまで駆け上がってきた。

その夢に描き続けてきた一戦が、決勝戦という最高の舞台で実現。東京五輪と同じ会場である東京体育館で、世界ランキング上位2チームによる卓球界最高峰の戦いが始まった。

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第1試合のダブルスは、日本はここまで全試合固定で起用し続けてきた平野美宇&石川佳純ペア、中国からは世界ランキング1位の陳夢(チェン・ムン)と同2位の劉詩文(リュウ・シブン)のペアが登場。

注目の初球は、石川のサーブからスタート。相手のツッツキを平野がドライブで打ち返し、日本ペアがこの日最初の得点を挙げた。序盤から平野、石川ともにフォアの強打が冴え、5-3と2点リードで前半を折り返す。だが、このままズルズルと失点しないのが中国だ。日本も粘るが、中盤で一気に逆転を許し、終盤のラリー戦をものにできず7-11で1ゲーム目を落とした。

相手を波に乗せる前になんとか立て直しを図りたい“かすみう”ペアだが、2ゲーム目は陳の巧みなサーブや強烈なドライブに対応できず、序盤から0-3と突き放される。平野の意表を突いたレシーブで劉を崩すなど、3連続ポイントで3-3の同点に追いつくも、どうしてもラリー戦で得点を挙げられず、4-7とリードを広げられてしまう。

日本側のタイムアウトの間には、平野と石川に観客からエールが送られた。ここから巻き返したい“かすみう”ペアだが、不運なネットインや、台上プレーのミスなどが重なり、4-9とさらに点差を離される。ここから粘りを見せ、9-10と中国ペアを追い詰めたが、あと一歩のところで平野が決め切れず、連続でゲームを奪われた。

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第3ゲーム、意地を見せたい日本ペアは、序盤は台上戦を制し3-1とリード。激しいラリー戦でも打ち負けず2連続ポイントを奪い、5-1と引き離してゲーム奪取のチャンスを広げていく。点差は詰まるも、このままリード保った“かすみう”ペアは、10-8とゲームポイントを迎えた。しかし、石川のドライブがラケットにうまくミートせず、1点を失うと、平野もドライブを決め切れずデュースまでもつれ込む展開に。最後は中国ペアに押し切られて10-12でゲームを落とし、0-3でストレート負けを喫した。

世界ランクトップ2の中国ペアに対し、3ゲーム目で優位な場面も作ったものの、「あと1点」が遠く感じる試合となった。石川は3ゲーム目について「少しずついい形になっていたので、(3ゲーム目を)取れなかったのは悔しい。10-8から私のサーブが浮いちゃって、その後にカウンターを決められてしまった。ただ厳しいボールではなかったので、打ち返して3ゲーム目を取っていれば流れは変わったかもしれない。そういう、あとちょっとのところだった」と敗因を挙げた。

平野も「全体的にはいいプレーも多かったし、悪いところは少なかった。けど、やっぱり1本ミスをしてしまうと、その隙を中国人選手は見逃してくれない。取れるポイントを確実に取れる選手になりたい」と改めて中国の強さを感じている様子だった。

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初戦を落ちした日本は、2試合目に今大会いまだ負けがない絶対的エース・伊藤美誠、対する中国は伊藤と同じ19歳で世界ランキング3位の孫穎莎(スン・イーシャ)を送り込む。

9日の準決勝では2試合ともドライブミスが目立ち、第1ゲームを落ちしていた伊藤だが、この日はフォア、バックともに強打が安定しており、5-1と序盤から大きくリードする。孫もすぐさま4連続ポイントを奪って巻き返し、5-5の同点に。その後、8-6と2点差をつけた伊藤は、強烈なフォアスマッシュを叩き込むなど10-6とゲームポイント。最後は相手のドライブミスを誘い、11-8でゲームを先取した。前日の試合後「1ゲーム目の中で早く切り替えたい」と話していた通り、いつも通りのプレーを序盤から出すことに成功した。

伊藤は勢いそのままに、第2ゲームも早いラリー展開で攻め立て5-3と主導権を握る。そのまま優位に試合を進め、9-5と大きく差を広げるが、伊藤自身のミスも響き9-8と1点差。タイムアウト後、落ち着いた表情から得意のサーブを繰り出していった伊藤だが、悪い流れを着るために間を取ったのも虚しく、孫に対応され9-9の同点に追いつかれた。それでもここで日本女子の“新エース”はチャンスを取り逃すことはしない。1点を取り先に2桁得点に乗せると、最後は怒涛のラリーから強烈なバックハンドを決め、ゲームカウント2-0で勝利に王手。その拳を天井に高々と突き上げた。

「(孫は今日)あまり自分らしさが出ていなくて、多分すごく緊張していた」と伊藤。女子チームの馬場美香監督も同じように孫のプレーに対して緊張感を感じていたという。だが、馬場監督が「気持ちが吹っ切れて、(孫が)思い切り攻めてきた」と話すように、次の3ゲーム目から試合の流れが一変する。

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その3ゲーム目は序盤から一進一退の攻防が続き、5-5と両者一歩も譲らない。その中で、世界ランク3位の意地を見せるかのように強烈なドライブを繰り出し、馬場監督が話した通り試合の均衡を破った孫。1ポイントを取るごとに大きな声を出し、自分の流れに引きずり込む。その勢いに飲まれた伊藤は、6-11と一気にゲームを奪われた。

第4ゲーム、慣れてきたのか、孫は伊藤の強打をことごとく跳ね返し、いつも通りのプレーを取り戻していく。1-7と大量リードを許した伊藤は、終盤7-10と3点差まで詰め寄ったものの、孫のフォアドライブを打ち返すことができずにゲームを落とし、スコアは2-2のタイに。会場に駆けつけた中国応援団の「加油(ジャーヨゥ)」の声が次第に大きくなっていった。

そして勝敗を決める第5ゲーム、伊藤が巧みなサーブ術で相手を崩し、序盤4-2とリードを掴む。最終戦ということもあり、観客からは「ニッポン!」コールが湧き上がり、場内のボルテージは最高潮に。伊藤はこの声援に乗って強烈なドライブを連発。7-6からの怒涛のラリー戦も制して2ポイントを連取すると、この日一番の雄叫びが会場に響き渡った。

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しかし、10-9で迎えたマッチポイントの場面、伊藤が放ったフォア前のサーブを孫がバックに強烈なフリックで打ち返して得点。土壇場で驚異の攻めを見せ、試合は10-10のデュースへ。伊藤もエースの意地を見せたいところだったが、最後は孫に2連続でポイントを奪われ、ゲームカウント2-0のリードからまさかの逆転負け。掴みかけた白星がこぼれ落ち、伊藤は呆然と立ちすくんだ。

伊藤は自身の試合について「最後の最後、10-7で勝っている場面、相手は基本しのいでくるところで攻め急いでしまった。それにより、孫選手は次のボールを思い切り打てるようになってしまって…。少し甘くなったボールを決め急がず、しっかりと落ち着いて決めることができれば、全然勝てた試合だった。そもそも3-0で勝たないといけない試合を、2-2にしてしまった時点で…」と悔しさを滲ませた。

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追い込まれた日本は3試合目に平野美宇を投入。優勝へあと1勝と迫った中国は、絶対的な安定感を誇る劉詩文で試合を決めにかかる。

悪い流れのなか、なんとか第1ゲームから自分の形で卓球をしていきたい平野だが、劉のベテランならではの巧みなサーブとコース取りに翻弄され、3-11とあっさりゲームを落としてしまう。

それでも続く2ゲーム目から立て直し、凄まじいスピードで展開されるラリーを制していく平野。徐々に声も出始め、準決勝の韓国・田志希(チョン・ジヒ)戦のような勢いを取り戻し、6-4と少しずつ差を広げていった。だが、劉も平野の攻撃のテンポにタイミングが合い始め、バックハンドの攻防で打ち勝ち、6-7と逆転。その後も平野は相手の緩急、長短つけたドライブに対応できず、8-11でゲームを取られて優勝に王手をかけられた。

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最後まで粘りを見せていきたい平野だが、流れを完全に相手に明け渡し、序盤から4連続失点。会場からは「がんばれ!」「一本!」と優勝を諦めないファンから声援が浴びせられたが、最後は5-10で平野がバックドライブをオーバーミスし、万事休す。優勝以上に目標に掲げていた「打倒中国」は叶わなかった。

平野は試合後「悪くはなかったんですけど、1セットも取ることができず、ちょっと実力差を感じた試合だった。来年までに距離をどれだけ縮められるかが大事」と振り返った。

結果だけを見れば、0-3と完敗だが、3試合とも決してネガティブな内容ではない。それは実際に戦った選手たちが一番に感じているはずだ。キャプテンとしてチームを引っ張ってきた石川は「(平野とダブルスを)2ヶ月ぐらいで急ピッチで仕上げたけど、最初と比べてすごくレベルアップできた。今大会で準決勝、決勝と負けてしまったけど、内容的には自信がついたし、まだまだ伸び代はある」と前向き。ともにペアとして実戦を重ねてきた平野も「最近(ダブルスのことが)わかってきて、すごく楽しいなって(笑)。ダブルスで成長するとシングルスにもいい影響を与えるし、また違った思考が湧いてくる」と敗戦からも十分な手応えを掴んているようだ。

2度の五輪出場を経験している石川は、この先の東京大会に向けて「私の感覚ですけど、五輪でプレーする時に一番大事なのは“心”だと思う。というのも、まず技術の前に心を鍛えてからコートに立たないと、プレーする時に本当に緊張してしまう。今大会以上の重圧が五輪ではかかってくるし、周りからは絶対に勝つことが求められるので、それにしっかり耐えられる準備をして、東京五輪に出場できたら最強のプレーができるように、しっかり鍛えたい」と自分自身に言い聞かせるように冷静に口にした。

エースとしての働きが期待される伊藤も「この短期間で自分の実力が上がっているとすごく感じる。もっともっと突っ走って、中国含めてどんな選手でも勝てるようにしていきたい」と相変わらず頼もしい。今大会が初めてだったという国内での団体戦は「感動した。声援が大きくて『すごいな〜』って思いながら試合していたところもあって。本当に嬉しかった。普段とは違う珍しい緊張感があったのも感じることができた」という。最後に「この中で自分の最大のパフォーマンスを出し、競った場面でも勝ち切る力をつけて、この場所に帰ってきたい」となにか覚悟を決めたような表情を浮かべながら、東京五輪への意気込みを語った。

4年に1度の“祭典”まで残り8ヶ月。世界ランクトップ10位以内に君臨する“日本卓球女子最強の3人娘”が、東京体育館の表彰台の真ん中で日の丸の国旗をまとい、国歌を斉唱する姿を期待したい。


取材・文・写真/佐藤主祥

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