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名人堂成员铃木一郎的评论凸显了“翻译节奏”的难度

日本とMLBで活躍した伝説的な外野手で、史上最多安打記録など数々の偉業を達成。卓越した打撃技術、俊足、守備力を兼ね備えた名選手、イチローこと鈴木一郎。2025年1月、イチローは日本人初のアメリカ野球殿堂入りを果たした。イチロー独特の話す“テンポ”、今回はそこに注目したい。※トップ画像出典/Getty Images

Icon 240910 02 01 1 佐々木真理絵 | 2025/02/26

イチローの“ユーモア溢れるコメント”

アメリカの野球界で殿堂入りするには、引退後5年以上が経過し、全米野球記者協会(BBWAA)の投票で75%以上の支持を得る必要がある。候補者は最大10年間投票対象となり、その間に基準を満たさなければ殿堂入りは叶わない。

投票権を持つのは、BBWAAに所属し、長年にわたってメジャーリーグを取材してきた記者たちである。彼らは、選手の成績やキャリアに加え、人格やスポーツへの貢献度なども考慮して投票を行う。現地時間2025年1月21日、イチローは394票中、393票を獲得しての殿堂入りとなった。

その際のコメントが以下。

「現役選手として7回クーパーズタウンに訪ねているんですけども8回目の今回、ホール・オブ・フェイマーとしてここに戻ってこれたことを大変光栄に思っています。

投票していただいた記者の方々、ありがとうございました。

…どうやら1人、投票してくれなかった人がいるようですが…。ぜひ、自宅に招待して、一緒にお酒を飲みたいので、名乗り出て、シアトルまでお越しください。」

この“ユーモア溢れるコメント”に、会場は温かい笑いに包まれた。

英訳する前に…まずは固有名詞をチェック

MLBが好きな人はすでにご存知かと思うが、クーパーズタウン(Cooperstown)は、アメリカ野球殿堂(National Baseball Hall of Fame and Museum)がある街で、野球の殿堂入りの象徴的な場所だ。

ニューヨーク州にあるこの施設は、殿堂入りを果たした選手や監督、審判、関係者の功績を称える場として知られている

そして殿堂入りを果たした選手は Hall of Famer(ホール・オブ・フェイマー) と呼ばれる。

「野球の殿堂入り」という話題が出ると、これらの固有名詞もセットで出てくることが多い。

イチロー独特の“テンポ”も一緒に「訳す」のがポイント

先のコメントでの言葉の選び方からもわかる通り、イチローの話し方はとても独特だ。流れるように話すのではなく、一語一句、噛み締めるように話す。

言葉と言葉の間に時間をたっぷり取り、とても丁寧に話している印象だ。

今回の彼のコメントを英語に訳すとすれば、

"I have visited Cooperstown seven times as a player,

I am deeply honored to return here as a Hall of Famer on this eighth visit.

To all the journalists who voted for me, thank you very much.

It seems that one person didn't vote for me... I’d love to invite you to my home and have a drink together, so please step forward and make your way to Seattle."

こんな感じだろうか。

ただこのとき重要なのが、そう“テンポ”だ。本人が間を開けてゆっくり慎重に話しているのに、通訳者が早口で簡潔に伝えてしまっては、彼の言葉が台無しになってしまう。

可能な限り、本人の独特の空気感を壊さずに伝えたい。

ただゆっくり話せばいいだけでしょ?と思うかもしれない。

しかし人は緊張すると「早口になる」のだ。筆者自身、何度も経験してきた。選手やコーチと壇上に上がり、こちらにカメラやボイスレコーダーを向けられると、とてつもなく心拍数が上がる。緊張でマイクを持つ手が震える。

そんな中、「本人の口調を崩さずに、テンポもコピーして伝えよう」と実行できるのは至難の業だ。しかし、こちらもプロとして可能な限り選手本人に伝えたいニュアンスを伝えることが大切だと考えている。

だからこそ“テンポ”も一緒に訳す——高度ではあるが、通訳に求められる技術のひとつなのかもしれない。

ちなみに、イチローに投票しなかった1名が、その後イチロー宅でお酒を交わしたのかは明らかになっていない。きっと、まだシアトル行きの航空券を探しているのだろう。

そしてもしも可能ならば、その会話も聞いてみたいと思う。