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日本人選手大活躍のパリオリンピック!その「裏」で起きた世界とのルール問題、テクノロジーを駆使した判断

「広く開かれた大会」をスローガンに開催されたパリオリンピック。日本代表は20個の金メダルを獲得し、メダル総数は45個と海外開催大会の最多記録を更新した。DAZNで配信されている「UNSAID-スポーツ界の表と裏-」#3では、パリ・オリンピックに出場した選手たちの輝かしい「表」の活躍を振り返りながら、その「裏」で起きた問題に焦点を当て、スポーツ界の未来のために熱い議論を繰り広げる。※トップ画像出典/FIFA via Getty Images

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大一番で最大の力を発揮できるメンタルの強さ

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来源/盖蒂图片社

“新お家芸”と呼ばれたフェンシングやスケートボードなど、メダルラッシュに沸いたパリオリンピック。日本のメダル総数は45個と多くのメダリストが誕生した。なかでも体操の男子団体やスケートボードの堀米雄斗は、大逆転で金メダルを獲得し大きな印象を残し、大一番にピークを持っていく精神力の強さに多くの日本人が魅了された。

メンタル調整について元メジャーリーガーの西岡剛さんは、現役だったときは「打ったらヒーローになれる、ラッキー」くらいの楽しむ気持ちで、プレッシャーのかかるチャンスの場面に向き合っていたと言う。さらに西岡さんはダルビッシュ有との出来事を教えてくれた。オリンピックのミーティングで、負けたら日本に帰れないなどと言うと、それが選手のプレッシャーを高め「絶対パフォーマンス的に落ちる」と、ダルビッシュ選手らに話したそうだ。その後の2023年のWBCでは、ダルビッシュ選手が後輩へ笑顔で声をかける姿を見て、以前会話したことを実践してくれていると嬉しくなったそう。WBCは「みんなが楽しんでやっていた大会になっていた」と分析し、「辛い経験をした人間が変えていく。時代によって変えていく」と、時代や環境に合ったメンタルの整え方の重要性を説いた。

世界大会で起きるルール問題とそれに対応する難しさ

素晴らしい成績を残した競技がある一方で、これまで日本のお家芸とされていた競泳は大苦戦し、メダル1個で大会を終えた。そんな競泳では協会側の準備不足に疑問を呈する声があった。

元アーティスティックスイミング日本代表の青木愛さんは「競泳も言われていますけど、シンクロもルール変更あって」と、アーティスティックスイミングにも同じようなことが起きていたと解説。新ルールに変更となり初めてのオリンピックだったが、採点に関する情報が一部の国にだけ事前に伝えられていた。それが結果にも影響したのではという声が挙がったのだ。青木さんは「協会側が確認するべきだったのか、シンクロの上の組織が世界に発信するべきだったのか」と、その問題点について述べる。

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出典/FIFA via Getty Images

青木さんの話に対し「世界的にも差別意識が絶対あると思う」と元Jリーガ―で北朝鮮代表の鄭大世さん。日本はルールを重んじるが、世界はルールに則るという概念が希薄なのだと言う。世界と戦う上で、「自分たちのグローバリズムの考え方を広げていくのが必要」と、国際レベルに合わせることの重要性を主張した。今後、世界とどう向き合っていくのかを、選手だけでなく協会やスタッフで今まで以上に議論しなくてはならないのかもしれない。

テクノロジー判定導入のメリットとデメリット

もうひとつのお家芸と言われる柔道では、判断基準や審判の質が話題となった。昨今ではテクノロジーを駆使した判断が求められる時代となっている。その進化について「圧倒的に肯定派」と鄭さん。サッカーでは、選手が審判の判定に対して正しい判断なのかとフラストレーションを抱える場面がよくあるとのこと。VARが導入された現在は「選手たちにとってはそこで時間がかかっても、ちゃんとした納得できる判定がある方がいい」と話す。今後、ルールの曖昧な部分をさらに詳しく定めていくことで、よりスピード感を持って判定できるように進化していくと解説した。

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出典/DeFodi Images via Getty Images

野球においても「テクノロジーによってちゃんとした判断があればと思うことは多々ある」と西岡さん。映像での判断であれば「選手としたら全部納得できる」と、試合に出る選手側としての気持ちを語った。一方で、映像による判断が試合結果に影響するケースもある。「(ビデオ判定を)どこまで徹底するか」を厳密に決めていかないと「選手としては納得できない部分がいっぱい出てくる」と、今後の可能性について言及。また野球の場合、地方の球場にはカメラがついていない。全球場へビデオ判定を導入するには多大な資金が必要なため、その不公平さの解消も課題のようだ。逆にアーティスティックスイミングでは、ビデオ判定を取り入れたことで、競技の醍醐味が失われているという声もある。青木さんによると、確実に点をとるために皆が同じ演技をするようになり「シンクロの良さがなくなってきている」と語る。パリオリンピックの現状を踏まえ、「来年またルールが変わるかもしれない」と競技の在り方自体も変えてしまう可能性に触れた。

2028年にはロサンゼルスオリンピックが開催される。日本の選手の「表」の部分の輝かしい活躍も楽しみであるが、今回「裏」で起きたような問題や疑問についてどう変わっていったのかにも注目していきたい。


『UNSAID ~スポーツ界の表と裏~』
タイトル:#3 パリ・オリンピック -新お家芸誕生と最新テクノロジーへの提言-
配信日:12月16日(月)全5回 順次「DAZN Freemium」でも配信
内容:2024年のスポーツ界の「表」としての輝かしい瞬間を振り返るとともに、「裏」に潜む課題や語りにくい問題に焦点を当て議論する。

※記事内の情報は配信時点の情報です。