朝仓环奈“比才能更重要的东西”——给所有接受挑战的人的一封信
輝かしい戦績やタイトルの裏側で、浅倉カンナが向き合い続けたのは「自分には特別な才能がないかもしれない」という不安だった。だからこそ、彼女は誰よりも努力し、挑戦し続けることで道を切り開いてきた。そして今、格闘技という舞台を降り、新たな人生を歩き出す彼女が見つけたのは、勝敗や結果を超えた「本当に大切なもの」。格闘技だけに縛られない、自分自身の可能性を信じて。浅倉カンナが語る、挑戦することの意味と、未来へ踏み出す勇気とは──。※メイン画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

「才能よりも大切なもの」──挑戦するすべての人へ
──少し話が変わりますが、カンナさんから見て、今の日本社会ってどう見えていますか?
最近、情報をあまり入れたくなくて、SNSもほとんどやめたんですよね。インスタだけはやってるんですけど、それ以外は全然見てなくて。だから、正直、日本社会について深く考えることはなかったですね(笑)。
ニュースもあまり見ないので、「今の日本ってこうだな」とかは特に感じてないんですけど…「ガソリン高くなったな」くらいしか思わないです(笑)。
──格闘技の世界に関してはどうですか?
格闘技に関して言えば、今はSNSで選手もファンも盛り上がる時代になっていますよね。
でも、それって良くも悪くもあるなとは思います。SNSをうまく使って注目を集めたり、ファンと交流したりするのも才能ですよね。例えば、ファンに対抗してみたり、煽り合いをしたりする選手もいるけど、あれができるのは一部の人だけだと思うし、普通の人にはなかなか難しいことだなって思いますね。
──現役時代、格闘技を通じてどんなメッセージを伝えたいと思っていましたか?
そんなに強い思いを持っていたわけではないんですけど、私はもともと「めちゃくちゃ才能があって、昔から強かった」わけじゃなくて、「普通の人が頑張って、ここまで来れた」タイプなんですよね。
だから、「誰でも目指せるんだよ」っていうのは、ずっと伝えたいと思っていました。
特に、トーナメントで優勝したときも、「自分ができるなら、これをできる人はたくさんいるはず」って思ってたし、自分を特別な存在とは思っていなかったんです。
「自分には才能がないかも…」って思って、最初から諦めないでほしい。努力すれば、誰でもチャンスを掴めるってことを、伝えたかったですね。
「迷いの先にある新しい自分」──変化を恐れず、一歩を踏み出す勇気

──格闘家を経て、カンナさんが今、伝えていきたいことって何ですか?
正直、今、自分も迷い中ですね。
格闘技をやっていた頃は、「これをやれば次にこうなる」というのが見えていたし、目標が常にあった。でも、引退した今はそれがなくて、「何をやればいいんだろう?」と初めて思っています。
だから、同じように「何をしたらいいのかわからない」と悩んでる人は、きっとたくさんいるんじゃないかなって。「一緒に頑張ろう」と、今はそんな気持ちですね。
──若いうちは色々チャレンジできるけど、環境を変えるってやっぱり勇気がいりますよね。
めちゃくちゃ勇気いりますね。格闘技を辞める決断も、すごく勇気が必要だったし、環境を変えることって、スポーツをやってるかどうかに関係なく、誰にでもあることだと思います。
でも、そういう変化を乗り越えて、また新しいことを成功させる未来がある。
「その先には楽しいことが待ってる」と、そう思っています。
──ジムをやるというのは、今までの延長線上の未来でもありますよね。カンナさんの中で「全く新しいこと」に挑戦したい気持ちはありますか?
うーん、今はまだないですね(笑)。でも、自分の中ではジムをやることも「全く違うこと」に感じています。だって、今までは「体を動かせばよかった」けど、これからは「経営者になる」わけじゃないですか。

──確かに、全然違う頭の使い方が必要になりますね。
そうなんです。今まで、本当に勉強してこなかったんですよ(笑)。車の免許くらいしか、まともに勉強したことがなくて。
でも、これからは「格闘技の頭の使い方」じゃなくて、「生きていくための頭の使い方」が必要だなって思っています。お金を稼ぐことも、経営のことも、今までと全然違う頭を使わなきゃいけないので、ちゃんと勉強しなきゃなって感じています。
「もうちょっと賢く生きたいな」と思いますね(笑)。
「競技の先にある私の未来」──格闘技だけに縛られない、新しい挑戦へ
──女性アスリートって、引退後のキャリアの選択肢がいろいろありますよね。スポーツに関わり続ける人もいれば、まったく別の道に進む人もいて。カンナさんは、どういう形で関わっていきたいと考えていますか?
私は「格闘技界の中心に残りたい!」というタイプではないですね。もちろん、ジムをやる予定なので格闘技に関連はしているんですけど、しっかりプロ選手などを育てていきたいわけではなく、あくまでフィットネス寄りのジムを考えています。だから、引退後も格闘技の中心に立って盛り上げたい!というタイプではないかもしれません。
──女性アスリートの中には、自分がやってきた競技をもっと広めたい!という視点を持つ人もいますが、そのあたりはどう思いますか?
なるほど…そういう考えも素敵ですね。
でも、私はどちらかというと、「とりあえず自分が楽しみたい!」というタイプなんですよね(笑)。もちろん、女性アスリートとして何か貢献できることがあれば嬉しいけど、今はまず「格闘技のない人生も楽しむこと、成功させること」を目標にしています。
──個人競技とチーム競技でも、引退後の考え方が変わるかもしれませんね。
確かに、それはあると思います。個人競技って、「全部自分で決めて、自分で動く」世界なので、引退後も自然と「自分の人生をどう生きるか」を意識するのかもしれません。
チーム競技だと、チームに所属していた流れで、そのまま指導者になったり、スポーツ団体に関わったりする人も多いと思うんですけど、個人競技は「競技から完全に離れる」選択をする人も多い気がしますね。
格闘技のない人生も楽しみ、成功させることが今の目標

──格闘家の中でも、「刺激を求めて戦う人」と「そうじゃない人」に分かれますよね?
そうなんですよね!私は、「刺激がほしくて格闘技をやっていたわけではない」タイプです。
もちろん試合は楽しかったし、戦うことも好きでしたけど、格闘技だけに人生を捧げる!っていうタイプではなかったかな。
でも、格闘家ってほんとに個性的な人が多くて、めちゃくちゃこだわりが強い人も多いんですよね(笑)。こだわりが強すぎるからこそ、強くなれるのかもしれないですけど。
──最後にセカンドキャリアへの意気込みをお聞かせください。
今の目標は、「格闘技のない人生も楽しむこと、成功させること」ですね。「振り返ったときに、『こっちの人生もめっちゃ楽しかった!』と思えたら、それが一番」。今はまだ、何が正解かもわからないし、手探り状態ですけど、いろんなことに挑戦していきたいですね!
浅倉カンナ(あさくら・かんな)
1997年10月12日生まれ、千葉県出身。幼い頃からレスリングを始め国際経験も持つ。2014年10月、17歳でプロデビューを果たすと、女子高生ファイターとして注目を集める。16年末よりRIZINに主戦場を移し、17年スーパーアトム級GPでは大晦日の準決勝でマリア・オリベイラに腕十字を極め、決勝ではRENAの打撃に臆することなくタックルを仕掛け、得意のバックチョークで絞め落とし優勝を果たした。18年と21年にタイトルマッチも経験。2024年9月『RIZIN.48』にて王者 伊澤星花との試合をもって現役を引退した。
Hair&make:Chiyo Kato (PUENTE.Inc)
Photo:Rika Matsukawa