軟式、ソフトボールからプロへ。硬式未経験の谷山莉奈が女子野球日本代表まで登り詰められた理由。
サッカーはロシアW杯で世界が沸き、日本代表の活躍に国内は大いに盛り上ったが、もう一つの日本における人気スポーツ・野球は8月にアメリカで女子野球W杯が開催される。 女子野球W杯は2年に1度開催されており、こちらの日本代表は2008年から現在5連覇中。世界で圧倒的な力を見せてきたが、今大会ではまた選手の顔ぶれも大きく変わり、6連覇へ向けた新たな戦いが始まる。 そのメンバーには女子プロ野球からも6人の選手が選出されている。今回はそのうちの1人で初選出組の埼玉アストライア・谷山莉奈投手に話を伺う。 谷山選手は硬式野球未経験のまま女子プロ野球の入団テストを受験し、合格したという変わった経歴の持ち主。昨年は最優秀防御率のタイトルを獲得し、プロ4年目となる今年はプロで、代表で、さらなる飛躍を目指している。
森大树
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2018/07/15
中高は野球から離れることに。教員を目指して大学進学。
ーまずは野球を始めたきっかけから教えてください。
3つ上に兄がいて、野球をやっていたので幼稚園の時からそのチームの練習に連れていってもらっていました。 それで小学校に上がると同時にチームに入ったという感じです。それ以外は幼稚園の中のクラブ活動のようなもので合気道やサッカーをやっていたくらいです。
野球は6年間そのチームでやって、中学生に上がる時にそのまま野球部に入るか悩みました。体格差も出てきますし、試合にも出たかったので結局そこでソフトボールを始めることにしました。オリンピックもありますからね。
私の場合、子供のころから特に運動ができたわけではなくて、50 m走で8秒切れたのも高校入ってからでした。でも長距離は男の子の中で負けず嫌いだったので頑張っていましたね。人並みぐらいの運動神経だったと思います。
ーソフトボールと野球の違いに戸惑いませんでしたか。
塁間の長さも違いますし、ボールの大きさやスピードも違いますから最初は難しかったですけど、でも慣れてきたらそんなに気になりませんでした。
むしろ男の子の中でやっていた小学生のチームから中学校になって、女の子だけのチームでやるようになった時にそれにうまく馴染めないというのはありました。女子特有のノリがあまり好きになれなくて。
でも高校で女子校に入ってからは楽しかったです。ありのままで過ごせましたし、すごく良い環境でプレーできました。ありのままで(笑)
ー高校卒業後は日本体育大学に進学していますが、競技を続けるつもりだったのでしょうか。
実は大学は野球もソフトボールもやる気はありませんでした。新しいスポーツを始めたいなと思っていたので。でも大学のオリエンテーションで軟式野球部を見に行った時に週3回の練習で全国大会で優勝していると聞いて、それで本当に日本一になれるのか、と気になったんです。そこにすごく惹かれたというか、それで続けるのもありかなと思いました。
初心者から始めてレギュラーを張ってる人もいて、同じ野球だけどまた違う世界なのかもしれないと思い、入ることにしました。
大学選びは高校の顧問の先生とお世話になった教育実習の先生が日体大出身で、それで自分も日体に行って先生になりたいなと思ったんです。結局教員免許も取らず、先生にもならなかったんですけどね。
ー週3回の練習だけで高いレベルを保てていたのには理由があるのでしょうか。
自主的に練習する時間が長かったのでそれが強さの秘訣だったのかなと思います。グラウンド練習は週3回、1日2時間しか取れないのでどうしても足りない部分が出てきます。そうなるとその他の部分の時間を使ってということになりますから。
私はそんなに練習が好きなタイプではなく、初心者の人が練習を頑張っているのを見てすごく刺激になった部分もありました。 その時の経験が現在も生きている部分はあって、自分の時間を使ってやれることをやるという意識は今もありますね。
私は自分が集中できている時はすごくいいんですけど、そうじゃない時に身が入らないままダラダラやるというのは好きじゃなくて、そういう意味でオンオフの切り替えをしっかりする術というのはそこで身につきました。
ピッチャー転向、プロを目指した理由。マウンドは決して孤独じゃない。
ー女子プロ野球に行こうと決めたのはいつのタイミングですか。
私、元々プロにいくつもりはなくて、本当は青年海外協力隊に興味があって、説明会にも行っていたんですよ。
でも4年生になって就職活動を始めるにあたり、同期の子が女子プロ野球を受けると言っていて、1個上の先輩にも山崎舞選手(埼玉アストライア)がいましたし、自分も受けてみようかなと思いました。
野球を続けられる環境があるのであればやりたいと思い、挑戦することにしたんです。自分がどこまで通用するのかを試してみたい気持ちもありました。
でも硬式もやっていませんでしたし、まさか受かると思っていませんでした。だから逆にプレッシャーを感じずにできたというのはあったのかもしれません。
テストに向けて、日体大のソフトボール部だった岩見(香枝・埼玉アストライア)選手を含めたテスト受験生同士で練習の合間に硬式に触ったりとかはしていたんですけど、11月にジャパンカップという大会があって、まだ引退していなかったのでメインはあくまで軟式でした。 だから硬式でキャッチボールする時の球が重い感覚はずっとありました。逆に硬式の方が変化球が曲がるという利点もあったんですけどね。
一緒に受けたうちの一人が特にすごくプロに行きたいと言ってたんですけど、合格できなかったので、今はその子の分まで頑張らないといけないと思っています。
ー現在はピッチャーですが、今までのポジションの遍歴を教えてください。
小学校の時はライトに始まり、セカンド、最後はファーストでしたね。中学生の時は内野全部、主にショートを守ってましたね。途中肩がよかったというのもあってキャッチャーもやったことがあります。高校はずっとセカンドを守ってました。
ピッチャーに転向したのは大学に入ってからですね。入った時は内野手で練習してたんですけど学生コーチから投げてみるように言われて、やってみたら意外とよくて。変化球の投げ方1つも知らないところからだったんですけど、その年の8月の全国大会でも投げさせてもらいました。1年生でベンチ入りできるのは3〜4人だけなのでそこに入れてもらえて投げられたのはすごく大きかったです。
ーピッチャーが自分に向いていると思いましたか?
自分が投げないと始まらないし、一番目立つじゃないですか。そこがすごく魅力あるポジションだなと思いました。負けず嫌いでしたし、ピッチャーが7割8割を占めると言われているこのスポーツで重要なポジションであることに惹かれました。 試合への貢献度が高いという部分でのやりがいはありますよね。
最初はマウンドに立ってると不安な気持ちが大きかったんですけど、やっていくうちにチームの中に自分がいるというのを感じられるようになってきて、そこから孤独はあまり感じなくなりました。後ろで守ってくれる人がいるんだな、というのが分かった時には楽になれました。
最初はとにかくストライクを入れなきゃというように自分を追い込んでしまっていたんですけど、助けてくれるバックの存在を感じられたことで1人で背負いこまなくてもいいんだと思えて、考え方が変わったんです。
ー谷山選手の持ち球と自信のある球を教えてください。
ストレート、カーブ、スライダー、シンカーです。カーブとスライダーは同じ握り方で手首の角度と軌道を少し変えています。
最初はカーブしか持ってなくて、それがいろんな曲がり方をし出したんです(笑)縦と斜めに切れていくのがあったので、それを分けることにしました。
ストレートはちょっとシュート回転して右バッターのインコースに食い込んでいくところが持ち味だと思います。それで中島(梨紗:埼玉アストライア前監督)さんからナチュラルのシュートじゃなくて自分でコントロールして右に曲がる球を覚えてみたら?と言われてシンカーを覚えることにしました。プロ2年目のことですね。
一番自信があるのはスライダーです。カーブを見せ球で使って最後はスライダーのボール球を振らせられたらいいと思ってます。去年はスライダーでゴロを打たせるのがベストだったんですけど、シーズン終盤から今年にかけてはスライダーのキレが良くなってきて空振りが取れるようになってきたのでそれは続けていけたらと思っています。
ただ、三振が一番いいという場面もありますけど、私の一番の持ち味はそこではないのでまずは事を打たせることを考えて、その中で使い分けをできるようになりたいです。
<続く>
中編→http://king-gear.com/articles/869
後編→http://king-gear.com/articles/870
谷山選手が所属する女子プロ野球・埼玉アストライアの次回ホームゲームは7月15日(日)、16日(月・祝)に開催されます! 16日は年に1度の一大イベント、神宮球場での試合開催になります。ぜひこの機会に女子プロ野球の観戦に足を運んでみてはいかがでしょうか。
◯7月15日(日)
ナビホーム Presents
埼玉アストライアvs愛知ディオーネ
場所:川口市営球場
時間:18:00~
詳細:https://www.jwbl.jp/astraia/news/detail/id/8032
◯7月16日(月・祝)
AEON LakeTown Presents
埼玉アストライアvs愛知ディオーネ
場所:明治神宮野球場
時間:19:00~
詳細:https://www.jwbl.jp/astraia/news/detail/id/7989