アスリートの睡眠や寝具へのこだわりとは(前編)
睡眠はアスリートのみならず必要であり重要なテーマである。特に日々の練習で肉体を酷使するアスリートにとって、睡眠を考えることは練習と同じくらい大切なはずだ。今回は睡眠のギアについて考えるべく東京西川へ潜入した。
小池菊池
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二〇一八年十月十五日
「アスリートにとってのギアとはなんだろう?」と原点に戻って考えた。シューズ、ウェア、バット、ラケットと色々でてくる。
以前に取材をさせて頂いたオランダでプレーしているファン・ウェルメスケルケン・際選手が「スパイクの他にこだわっているギアがAiRというマットレスなんです」と話してくれたのを思い出した。
これは話を聞きに行くしかないと思いAiRを開発&販売している東京西川の本社に伺った。須藤 健二朗さんにAiRへの想いなどの話を伺った。
――アスリートをサポートしようとした経緯を教えてください。
须藤 AiRというブランド自体が「スポーツ×睡眠」をキーワードにしており、2009年に発売しました。
弊社は今年で創業452年を迎えますが、元々の寝具のイメージ自体が「腰が痛いから布団を買いに行く」や「結婚する際に寝具を買い替える」などとシニア層の高めの女性が主な購買層だったんです。
「眠りは生まれてから生涯を終えるまで重要。もっと寝具の重要性を伝え関心を持ってもらうべきではないか」というのが弊社の考えでした。
その中の施策として、若年層や男性層をキーワードに新たなお客様を想像した際に「スポーツ×睡眠」がでてきたんです。
老若男女がスポーツを観ることと、アスリートは身体のメンテナンスに非常に気を遣っているので、アスリートが睡眠や寝具にこだわることを切り口として「スポーツ×睡眠」をコンセプトにした製品を発売致しました。
――確かに私が幼い頃の寝具へのイメージは、祖母が「寒いから暖かい布団を買い替えに行く」というようなものでした。
须藤 そもそも男性は寝具を購入することが少なく、一人暮らし・結婚などのタイミングでも母親や奥様が用意することが多く、自ら購入をしていないのが現状かと思います。まずは眠りに関心を持って頂きたい想いがありました。
――寝具のイメージをどう変えていったんですか?
この業界は、以前から花柄やペズリー柄というものが定番のデザインでした。デザインにこだわり、オフィシャルアドバイザーとして、プロゴルファーの有村智恵さんと読売ジャイアンツの坂本勇人さんに就任してもらいました。
ただ、すぐに売り上げが伸びたわけではなく、徐々に認知して頂き広がっていったんです。
「運動・栄養・休息」というところで、栄養は味の素さんや明治さんなどの影響もあり、栄養については選手の興味、関心が高くなっておりましたが、睡眠は「良く眠る」ことや「眠る時間」だけを考えていて、重要性や質の高い睡眠をとることはあまり考えられていなかったんです。
例を挙げると食べ物は「何を食べましたか?」シューズは「何を履いていますか?」と聞いたらすぐに答えられますが「寝具は何を使ってますか?」と聞くと選手は答えられないんです。
そもそも寝具メーカーを何社も知っている人がほぼいない状況でした。
――恥ずかしながら私も何の寝具を使っているか即答できません。有村さんと坂本さんをアンバサダーに起用した理由は?
须藤 睡眠の重要性の認識が高く、AiRを非常に気に入って愛用していることが起用した理由となります。
また、当時の女子ゴルフは凄く人気があったので、ゴルフをやられている男性層に認知されるようにという想いと、プロ野球は日本で老若男女に1番人気があった点も起用の理由になります。
――サッカー選手が使用することになったきっかけは?
须藤 2012年にロンドンオリンピックのタイミングでレスリング協会をサポートしました。
レスリング選手が活躍し、取材などでAiRがテレビの画面に映り、それがきっかけで消費者よりもスポーツ選手から「あれはなんだ?」と関心を持たれ、スポーツ選手の中で話題になりはじめました。
2012年の夏以降に色々な選手からの問い合わせがありました。サッカー選手との出会いもその時にありました。
我々は、ただ商品を渡すことはしていなくて、弊社内にある「日本睡眠科学研究所」に来社頂き、まずは睡眠の重要性を伝えた後、マットレスと枕の測定を行います。
自分に合うマットレスを探し出し、枕をオーダーで作ることが選手から信頼されることになり、選手間のなかで話題になることになりました。
――どんな測定をするんですか?
マットレスは体圧分布を測定し、自分に合った硬さや構造のものをお選び頂きます。枕は首〜肩のラインを測定し、14か所のポイントで高さを調整していきます。
そんななか有村さんから「ゴルフでアメリカに行くと転戦が多いので、せめて家と同じような環境で寝たい」という話からポータブルシリーズという持ち運びが出来るシリーズを作ったことが他のブランドとは違う点です。
――遠征先に選手がマットレスなどを持ち運んでいるのをよく見ますよ。
须藤 それは嬉しいです。持ち運び用のマットレス、移動用のクッション、ネックピローなどがあります。
バスなどの移動で首が凝るということから、単に首を支えるものではなく、オーダー枕と同様に、選手個々の体形や体格に合うように高さを自動調整するネックピローです。
ネックピローは使う際に空気を入れて自分の首の高さに合うように自動的に調整できます。 スポーツによって体系や体格が違うので合うものを使ってもらいたい想いがあるんです。
――選手のコンディション向上に必要なギアになりましたよね。
须藤 先日、ある高校サッカー部の監督と会いましたが「フィジカルトレーナーをつけているけれど、睡眠でここまで変わると思っていなかったので考えていこうかな」という話を頂きました。情報が伝わっていないのが一番かもしれませんね。
――いい睡眠をとることは選手にとって物凄く重要ですよね。
须藤 いい睡眠をとることによって睡眠の質が高まり、次の日のコンディションが変わってきます。
日本睡眠科学研究所に選手に来てもらい「睡眠はあなたにとって凄く重要だよね」という話をしてその後に商品の説明をしています。
体圧分布測定器を使用し、全身の力のかかり具合を測定します。仰向け、横向き寝のデータを取得し、自動判定の機械で点数を出します。
点数が出ることにより商品に対しての納得感が増し、選手が愛用するようになっております。
選手には「なんでそれを使っているの?」と聞かれても答えられるようにして欲しいんです。
しっかりと睡眠を考える選手のサポートをしたいですし、理解しないと世界で一流になれないのではと私は思っています。
弊社はモノづくりに関しては非常にこだわりをもっている会社ですので、商品に関しては日本でも世界でも負けないと思っています。
後編に続く
ネックピローの写真:西川産業株式会社 提供
取材中写真:菊池康平
以前に取材をさせて頂いたオランダでプレーしているファン・ウェルメスケルケン・際選手が「スパイクの他にこだわっているギアがAiRというマットレスなんです」と話してくれたのを思い出した。
これは話を聞きに行くしかないと思いAiRを開発&販売している東京西川の本社に伺った。須藤 健二朗さんにAiRへの想いなどの話を伺った。
――アスリートをサポートしようとした経緯を教えてください。
须藤 AiRというブランド自体が「スポーツ×睡眠」をキーワードにしており、2009年に発売しました。
弊社は今年で創業452年を迎えますが、元々の寝具のイメージ自体が「腰が痛いから布団を買いに行く」や「結婚する際に寝具を買い替える」などとシニア層の高めの女性が主な購買層だったんです。
「眠りは生まれてから生涯を終えるまで重要。もっと寝具の重要性を伝え関心を持ってもらうべきではないか」というのが弊社の考えでした。
その中の施策として、若年層や男性層をキーワードに新たなお客様を想像した際に「スポーツ×睡眠」がでてきたんです。
老若男女がスポーツを観ることと、アスリートは身体のメンテナンスに非常に気を遣っているので、アスリートが睡眠や寝具にこだわることを切り口として「スポーツ×睡眠」をコンセプトにした製品を発売致しました。
――確かに私が幼い頃の寝具へのイメージは、祖母が「寒いから暖かい布団を買い替えに行く」というようなものでした。
须藤 そもそも男性は寝具を購入することが少なく、一人暮らし・結婚などのタイミングでも母親や奥様が用意することが多く、自ら購入をしていないのが現状かと思います。まずは眠りに関心を持って頂きたい想いがありました。
――寝具のイメージをどう変えていったんですか?
この業界は、以前から花柄やペズリー柄というものが定番のデザインでした。デザインにこだわり、オフィシャルアドバイザーとして、プロゴルファーの有村智恵さんと読売ジャイアンツの坂本勇人さんに就任してもらいました。
ただ、すぐに売り上げが伸びたわけではなく、徐々に認知して頂き広がっていったんです。
「運動・栄養・休息」というところで、栄養は味の素さんや明治さんなどの影響もあり、栄養については選手の興味、関心が高くなっておりましたが、睡眠は「良く眠る」ことや「眠る時間」だけを考えていて、重要性や質の高い睡眠をとることはあまり考えられていなかったんです。
例を挙げると食べ物は「何を食べましたか?」シューズは「何を履いていますか?」と聞いたらすぐに答えられますが「寝具は何を使ってますか?」と聞くと選手は答えられないんです。
そもそも寝具メーカーを何社も知っている人がほぼいない状況でした。
――恥ずかしながら私も何の寝具を使っているか即答できません。有村さんと坂本さんをアンバサダーに起用した理由は?
须藤 睡眠の重要性の認識が高く、AiRを非常に気に入って愛用していることが起用した理由となります。
また、当時の女子ゴルフは凄く人気があったので、ゴルフをやられている男性層に認知されるようにという想いと、プロ野球は日本で老若男女に1番人気があった点も起用の理由になります。
――サッカー選手が使用することになったきっかけは?
须藤 2012年にロンドンオリンピックのタイミングでレスリング協会をサポートしました。
レスリング選手が活躍し、取材などでAiRがテレビの画面に映り、それがきっかけで消費者よりもスポーツ選手から「あれはなんだ?」と関心を持たれ、スポーツ選手の中で話題になりはじめました。
2012年の夏以降に色々な選手からの問い合わせがありました。サッカー選手との出会いもその時にありました。
我々は、ただ商品を渡すことはしていなくて、弊社内にある「日本睡眠科学研究所」に来社頂き、まずは睡眠の重要性を伝えた後、マットレスと枕の測定を行います。
自分に合うマットレスを探し出し、枕をオーダーで作ることが選手から信頼されることになり、選手間のなかで話題になることになりました。
――どんな測定をするんですか?
マットレスは体圧分布を測定し、自分に合った硬さや構造のものをお選び頂きます。枕は首〜肩のラインを測定し、14か所のポイントで高さを調整していきます。
そんななか有村さんから「ゴルフでアメリカに行くと転戦が多いので、せめて家と同じような環境で寝たい」という話からポータブルシリーズという持ち運びが出来るシリーズを作ったことが他のブランドとは違う点です。
――遠征先に選手がマットレスなどを持ち運んでいるのをよく見ますよ。
须藤 それは嬉しいです。持ち運び用のマットレス、移動用のクッション、ネックピローなどがあります。
バスなどの移動で首が凝るということから、単に首を支えるものではなく、オーダー枕と同様に、選手個々の体形や体格に合うように高さを自動調整するネックピローです。
ネックピローは使う際に空気を入れて自分の首の高さに合うように自動的に調整できます。 スポーツによって体系や体格が違うので合うものを使ってもらいたい想いがあるんです。
――選手のコンディション向上に必要なギアになりましたよね。
须藤 先日、ある高校サッカー部の監督と会いましたが「フィジカルトレーナーをつけているけれど、睡眠でここまで変わると思っていなかったので考えていこうかな」という話を頂きました。情報が伝わっていないのが一番かもしれませんね。
――いい睡眠をとることは選手にとって物凄く重要ですよね。
须藤 いい睡眠をとることによって睡眠の質が高まり、次の日のコンディションが変わってきます。
日本睡眠科学研究所に選手に来てもらい「睡眠はあなたにとって凄く重要だよね」という話をしてその後に商品の説明をしています。
体圧分布測定器を使用し、全身の力のかかり具合を測定します。仰向け、横向き寝のデータを取得し、自動判定の機械で点数を出します。
点数が出ることにより商品に対しての納得感が増し、選手が愛用するようになっております。
選手には「なんでそれを使っているの?」と聞かれても答えられるようにして欲しいんです。
しっかりと睡眠を考える選手のサポートをしたいですし、理解しないと世界で一流になれないのではと私は思っています。
弊社はモノづくりに関しては非常にこだわりをもっている会社ですので、商品に関しては日本でも世界でも負けないと思っています。
後編に続く
ネックピローの写真:西川産業株式会社 提供
取材中写真:菊池康平