阪神・秋山拓巳投手登場!スポーツドクター辻秀一が教える「誰でもできるメンタルマネジメント」講演会取材レポート

2017/01/31
2016年11月1日にオープンしたばかりの渋谷diamond allians town。“多くの方に継続的にご利用いただけるフィットネス環境の提供“をコンセプトにオープンした複合施設で、2016年12月18日に「Life Style Salon 2016」イベントが実施され、数多くの著名人やアスリートが講演に参加した。午後のメンタルトレーニングのセッションは、プロ野球阪神タイガースの秋山拓巳投手が招かれ、対談形式で行われた。講演では、実際にプロのアスリートが現場でパフォーマンスを最大限発揮する為に日々行うメンタルトレーニング法を中心に紹介され、参加者の注目を集めた。

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「スポーツは文化である」。ドクター辻秀一の言葉には力が込もっていた。この言葉が彼の原動力になっており、「元気」「感動」「仲間」「成長」をモットーにしているのだという。

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特に、スラムダンクの井上氏との出会いが人生を大きく変えたと言い、現在はスポーツの種類や仕事の業種・業界に関係なく、メンタルトレーニングの指導を全国各地で実施している。あのジャパネットたかたの元社長・高田明氏にもメンタルトレーニングの指導を行ったとのことで、指導の範囲は大変広い印象を受けた。

秋山選手との対談形式で、「どうやって緊張や不安を減らした?」という質問があった。感情を抑制しようとするだけでは難しく、良いイメージをつくること。殆どの人が”自分の状態に気づくということができていない”というのだという。これにまず気づくことがとても大事なこと。人間は結果や成果に基いて生きており、意味付けに気づくことから緊張や不安を緩和でき、やがて目の前で取り組んでいることを楽しめるようになるだとか。

秋山選手の場合、これまではマウンドにあがって試合がピンチの時、いつも「どうしよう?」って思った時は、とりあえずはキャッチャーの指示通り今までやっていたのだという。

それがメンタルトレーニング実施後は、その「どうしよう?」という極度な緊張や混乱状態がなくなり、自分自身が置かれている状態に気づけるようになったことが一番成長した部分だと実感していると紹介しれくれた。

つまり、結果を出せない多くの人は「今」に集中できていないのだという。


メンタルトレーニングで一番大事な基礎は「フロー」で、「フロー」は目の前の状態が価値化されている状態を指す。フローの価値化によって、活躍できる確率が上がり、結果楽しくやれる。多くの人は楽しいと結果を出すことは相反することだと感じているが、そうではないというのがスポーツドクター辻流の発想である。

ドクター辻は幾つか興味深いエピソードを対談中に紹介してくれた。WBCのイチロー選手についてである。

7年前に日本がWBCで世界一になった韓国戦で、前の打者が川崎選手で、イチロー選手が試合を決めないといけない大一番の場面だったのだが、本人は調子も悪い中で打順がまわってきたのだという。イチロー選手自身も打席に立ち、ボールをバットに”当てにいっている”という感覚を途中で気づき、まさに我に帰り、自分で自分を客観視するように繰り返し意識したのだとか。結果、自分の心が整いだし、誰もが知るあの目覚ましい結果に繋がったのだが、それらの処理はたった6球の中で脳内行われていたものである。

一流選手であっても好調不調の波は付き物で、そういう場面こそ、自分自身をフロー化し、メンタルマネジメントできるかが勝敗の鍵を握るのだ。


また、バスケで有名な田臥選手の場合は、「頑張ります」をフローワードにしているという。

マスコミやメディアから日々色々なプレッシャーや質問がきて、自分の意図しないところで色んな質問や結果が勝手に意味付けをされてしまう環境にあり、それに囚われすぎないように「頑張ります」の一言で、自分自身を落ち着かせるようにしている。

NIKE社の「Just do it」ではないが、多くの人は目の前のことに集中したり、一生懸命取り組んだりすることから避けがちで、何をするその「it」すらすら不明確な状態に陥ってしまう。Just do itすらできていないのでは実力を出せない。多くのひとは目標に囚われてすぎてしまい、今に集中できていない。そういったプレッシャーから自身を開放し、フロー状態に自身を持っていく為に「頑張ります」を合言葉にしているというエピソードも実に興味深かった。

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最後に、ドクター辻は「成功とは、自分なれるベストの状態になるために最善を尽くしたと自覚し、満足することによって得られる、心の平和のことである」と締めくくった。

スポーツドクター辻秀一 オフィシャルHP: http://www.doctor-tsuji.com/

取材・文/西村真