イチロー率いるKOBE CHIBENが女子野球選抜と対戦 初回3失点に「初めて怖さを感じた」
「SATO presents高校野球女子選抜対イチロー選抜」の試合が9月23日に東京ドームで行われた。イチロー氏の野球普及に対する思いから2021年に初開催された試合は今年で4回目を迎え、イチロー氏が率いるKOBE CHIBENには松坂大輔氏に加えて松井秀喜氏も初参戦。試合後には3氏が取材に応じ、イベントを振り返った。※トップ画像撮影/井本佳孝
「SATO presents高校野球女子選抜対イチロー選抜」の試合後にはイチロー選手が取材に応じ、4回目の開催を振り返った。
撮影/井本佳孝
――まずは試合を終えられた思いを聞かせてください。
イチロー:こんな気持ち良く、かつ真剣勝負ができるゲームを僕は知りません。「ボロボロになるまでやりたい」と改めて思いました。
初回に3失点を喫したイチロー投手(筆者撮影)
――初回に3点を失うこれまでにない苦しい立ち上がりだったと思いますが?
イチロー:初めてですよ。女子代表チームが「(試合に向けて)合宿をしてきた」とは聞いていたんですけど、対策してきたとはいえ、あんなに芯を食われるとはまったく想定していなかったので、すごく怖かったです。「もう(イニングが)終わらないんじゃないか」という不安に襲われました。
これまでの試合で「レベル上がってきて上手くなったな」と思ったことは何度もありますけど、怖いなと思ったことは今日初めてで…。驚きました。
作者拍摄
ーー今年のチームに対する印象を聞かせてください。
イチロー:右バッターが内側のスライダーを見切ったようなファウルを打つんです。履正社の子とかね。男子選手でもなかなかあのような技術は持っていませんから、あれは恐怖でした。
相手投手にとっての“嫌なバッター”は、ファールを意図的に打てるバッターなんですよね。それができていたので、驚きました。
撮影/井本佳孝
――出場された女子高生の皆さんも「イチローさんから打てたことは一生の宝物だ」とか「イチローさんと対戦できた経験は一生自慢できる」とお話しされていました。
イチロー:そうですか。いや、もうそのように言ってくれるのなら、この試合を続ける意義があります。
「あいつから打っても当たり前だ」と言われてしまうようになったら試合を続けられないので……。僕と対戦したことや、僕からヒットを打てて自慢できるという状態はすごく望ましいので 嬉しいですし、それをこのままキープしたいです。
作者拍摄
――試合は4度目の開催を迎えました。徐々に女子野球も発展しているように感じるのですが、イチローさんはどのように感じていますか?
イチロー:僕も(発展している)実感はありますが、この1試合だけではまだまだ成立しないものがたくさんあると思っています。例えば、野球の上手い男子高校生は、プロ野球選手になったり、その先にMLBがあったりする道があるわけですが、女子の選手にはまだありません。
もし、みんながこの試合を「面白い」と言ってくれて、女子の野球人口が増えてきたら、そのような可能性が広がってくると思いますから。今、小学生の子どもたちが試合に出て、対戦できるようになるまで頑張ります。そうすると「果たして何歳までまでやらなきゃいけないのかな……?」と思うけれど(笑)。
松井秀喜や松坂大輔も試合にきてくれて、このような形で注目してもらえる。いきなり物事を大きく変えるのはなかなか難しいけれど、「まずは小さなきっかけを作りたいな」と思っているので、もしそのように感じてもらえたら嬉しいです。
撮影/井本佳孝
イチロー:高校野球、大学野球、プロ野球、MLB辺りは、そんなに僕が関わらなくても、勝手に盛り上げてくれる人がたくさんいますし、もしかしたら僕は必要ないのかもしれない。
でも、この試合は今のところ、僕が中心になって開催させてもらっているゲームで、それを4年目まで続けられた。それが僕にとってもすごく大きなことだと思いますし、僕が2019年に引退した時には、51歳になる年に「本当に限界までやりたい」という思いに駆られることになろうとは想像できませんでした。
自分にとって、東京ドームにはたくさんの思い出がある場所ですし、たくさんのお客さんの前でプレーができて、喜んでもらえた。しかもこんな気持ちの良い試合で、真剣勝負をさせてもらえる。色々と変化しながらも新しいものが生まれ、良いことが起こっていくのは、本当に素敵なことだなって思います。