アカツキ参画がヴェルディに何をもたらすのか。スタジアムを緑で埋め尽くすために必要なこと。
今年で創立50周年のJリーグの名門クラブ・東京ヴェルディ。今シーズンから株主そしてユニフォーム胸スポンサーとして株式会社アカツキを迎え、悲願のJ1復帰を目指す戦いが間もなく始まる。 後編ではモバイルゲーム事業を中心に行うアカツキがヴェルディにもたらす具体的な効果とその先に見据える世界について、引き続き株式会社アカツキの塩田代表と梅本執行役員に伺う。
森大树
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2019/03/09
ヴェルディをよくするためにアカツキができること
前編は、こちらをご覧ください。ーアカツキがヴェルディに関わることでもたらされるメリットはどのようなところにあるのでしょうか。
塩田:これからさらに新しいファンを増やしつつ、既存のファンの満足度も高めるという両軸をやっていく必要があるわけですが、そのためにはまず分析が必要です。
その点に関してゲーム業界は他の業界よりも特に細かくやっていると思います。ユーザーを細かく分析して、どういう時に彼らは感情的になり、離脱してしまうのか。あるいは何日続けて使ってくれるとファンになってくれるのか。そういったことを流入経路別に細かく分析を行ったりします。
このノウハウを用いて我々がヴェルディの試合に来る観客を分析をすることで、それぞれの属性に合わせた新たな施策を打てると思います。実行するためにアカツキの方から人材をヴェルディに送ってオンライン、オフライン両面からお手伝いしていきます。
梅本:プロモーションについては、よくバケツに流す水に例えられますね。底に穴が開いたバケツにたくさん水を注いでもこぼれるだけです。そして1回こぼれた水は元には戻せない。つまり一度たくさん人を入れたとしても、満足してもらえなければ次に繋がらず、離れてしまった人々を呼び戻すのは困難だということです。だからまずは穴を塞ぐことをします。
ゲームではダウンロードしてくれた人が明日も明後日もログインしてくれる人が何人いるのか、1回に何分遊んでくれるのかというのを分析して離脱要因をクリアにする、つまり開いているバケツの穴を1つずつ塞いでいったところでようやくCMを打ったりするんです。
それをサッカーに置き換えると、スタジアムに来た人が次の試合も来てくれているかを追う、追えていないならデータとして取れるように設計し直します。その上でどうすればスタジアムに来て楽しいと思ってもらえるのか。さらには家に帰ってからヴェルディのことを思い出し、また足を運んでもらうにはどうすればいいのかを考えます。
そのためにYouTubeでの動画配信やSNSでの情報発信などのデジタルコンテンツも駆使するのも必要でしょう。それってまさにゲームと一緒なんですよね。リアルとデジタルを合わせてマーケティングをやっていく上で我々が持っているノウハウを今後ヴェルディに活かしていきます。
ー感動体験できる場所を作る、それを思い起こさせる、再び足を運んでもらうという流れですね。
塩田:はい。皆さんとヴェルディとのタッチポイントをどうやって作っていくかっていうのはすごく重要です。人間はすごく忘れやすい生き物なので、来てくれた時の体験を素晴らしくすることと、スタジアムにいない時のコミュニケーションを設計すること、この両方が大切です。
梅本:最初のうちは観客が多少少なくてもいいんです。少なくてもその人がずっとスタジアムに来てくれることが大切。その上でたくさん水を流すと言うこと、人をたくさん呼ぶことをやっていきましょうということです。
渋谷スタジアム構想。東京の多様性のシンボルに。
ーまだ構想段階ではあるのものの、代々木公園にスタジアムを建設する計画も持ち上がっていますね。
塩田:我々もできれば23区にもスタジアムがあった方がいいと思っています。実際、今渋谷にスタジアムを作ろうという活動にも参加させていただいています。
もしも渋谷でヴェルディのゲームを見ていただけることになったら、訪れてくれた世界中の方々に最高のスタジアム体験を提供したいと思っています。今はスマートスタジアムの事例も海外で出てきていますが、デジタルとリアルをテクノロジーでどう繋いでいくかは考えなければなりません。
アカツキはいろいろなスタートアップに投資をしていて、その中には高度な映像技術を持っているところがあったりもするので、それを生かすことも可能だと思います。あるいはスマホのアプリと連動したコミュニケーションを生み出したり、ARやその他の新しいテクノロジなども活かせるかもしれませんね。
もしも渋谷でヴェルディのゲームを見ていただけることになったら、訪れてくれた世界中の方々に最高のスタジアム体験を提供したいと思っています。今はスマートスタジアムの事例も海外で出てきていますが、デジタルとリアルをテクノロジーでどう繋いでいくかは考えなければなりません。
アカツキはいろいろなスタートアップに投資をしていて、その中には高度な映像技術を持っているところがあったりもするので、それを生かすことも可能だと思います。あるいはスマホのアプリと連動したコミュニケーションを生み出したり、ARやその他の新しいテクノロジなども活かせるかもしれませんね。
ー東京都心は様々な場所から人が集まる場所で地域密着という観点から見ると難しさもあるのではないでしょうか?
塩田:国内外から人が集まるからこそ多様性が生まれるのであって、いろいろな人を受け入れられて世界のハブになれる、そのシンボル的存在となり得る場所が東京だと思います。
むしろそのコンセプトに沿ってヴェルディの試合もどんな人にでも足を運んでいい場所として根付いていければいいですね。
例えば地方から東京に出てきた人たちが不安を抱えながら生活することもある中で、「自分たちも東京にいていいんだ」とお互いに感じられるような場所になれたらと思っています。
ヴェルディブランドとしてあらゆる競技で統一のロゴを用いることが50周年セレモニーで発表された
ヴェルディらしさを突き詰める。総合型地域スポーツクラブ挑戦の意義。
ー50周年に合わせ、総合型地域スポーツクラブとしての活動も強化するべく、ヴェルディブランドの統一化が進んでいます。
塩田:サッカーが好きなので、まずはそこからというのはあるのですが、他の競技にも力を入れていきたいとは思っています。
なぜ僕がスポーツを好きなのかというと、いろんな人と仲良くなれるところにあります。そしてアカツキには受容力が高い人間が集まっていて、色々な考え方を受け入れられる土壌があります。それを生かして伝統あるスポーツの世界の方々と仲良くなって、いろいろなことを一緒にやっていけるんじゃないかと思っています。
あとはこの機会にもう一度スポーツをビジネスとして捉えるべきだとも思います。というのも本来であれば素晴らしいコンテンツを通して感動と価値を届けているのであれば、それに従ってお金の規模も大きくなっていいはずです。ヴェルディのブランディングと並行してマネタイズもしっかり行っていきたいです。
梅本:長期的に考えれば、ビジネスの成功という観点でも総合型地域スポーツクラブをやっていく意味は大きいんです。サッカーに限定するとサッカーファンにしか届かない。人材育成の面においても、ヴェルディの素晴らしい理念がサッカーに関わる人にしか届かないということになります。
それをサッカーのようなメジャー競技以外にも、例えばスケートボードやブレイクダンスといったストリートスポーツにも広げていくことで、活躍するパフォーマーの育成に繋がり、オリンピックや世界の舞台に出る選手が生まれるかもしれません。そうなれば今までとはまた違った、より幅広い層に価値を届けられるようになります。また、ヴェルディのブランドに触れる機会が日常的に増えれば継続的に好きになってもらえるチャンスも増えます。
あるいは色々な競技を1つのブランドとしてやることによって、スポンサーにも競技を横断した提案ができるようになります。例えばサッカーだけでなく、野球やバスケットボールのユニフォームにもロゴを入れるといったことです。
ヴェルディブランドが確立されれば、スポンサーをする企業にとってもスポーツに対して一貫性を持って、サポートしていることを発信しやすくなり、結果マーケティングにも繋がるはずで、ビジネスとしての拡張性が生まれます。
ヴェルディブランドが確立されれば、スポンサーをする企業にとってもスポーツに対して一貫性を持って、サポートしていることを発信しやすくなり、結果マーケティングにも繋がるはずで、ビジネスとしての拡張性が生まれます。
塩田:だからこそ“ヴェルディらしさ”というコアの部分が重要になります。一体何がヴェルディと呼ぶにふさわしいのかを明確にして考えないといけません。
梅本:昔からサッカーのヴェルディといえばボールをちゃんとつなぐというイメージがある人も多いと思いますが、私はそのこと自体が重要だったのではなく、そこに何かしらのフィロソフィーが存在していたことが大事なのだと思います。そういった部分をもっと定義して言語化していきたいですね。
“らしさ”というのは滲み出てくるもので、作るものじゃないんです。あるものをどう表現するかという話でヴェルディにはそれがある。これはすごい価値なんですよね。
今は観ていないけれど、昔のヴェルディファンだったという皆さんにもぜひその“ヴェルディらしさ”を感じに戻ってきてほしいです!
ヴェルディ50周年式典で登壇した塩田氏
アカツキとともに、緑の栄光を取り戻しに行こう
ーついに節目の年の新シーズンが始まります。サポーターや関係者の皆さんへメッセージをお願いします。
塩田:ヴェルディサポーターの方々はかつての良い時から見てきた人もいれば、J2に降格して以降の苦しい時期を応援してきた人もいると思います。特にこの厳しい期間をクラブと共に歩んで来てくれた方々には本当に感謝です。
その支えがあったからこそ、今こうして我々がお手伝いできる機会をいただいていると思っています。ありがとうございます。これから僕たちはサポーターの皆さまと一緒にスポーツやビジネスを作っていきたいですし、それを大きく広げていくことで栄光を復活させていきたいです。
その支えがあったからこそ、今こうして我々がお手伝いできる機会をいただいていると思っています。ありがとうございます。これから僕たちはサポーターの皆さまと一緒にスポーツやビジネスを作っていきたいですし、それを大きく広げていくことで栄光を復活させていきたいです。
ヴェルディのサポーターの方々は、新しいファンを受け入れる文化があると聞いています。それは当たり前のようで当たり前のことじゃないと思っていて、おそらく新しい人が入ってくればいいことだけじゃないと思うんです、でもそれを受け入れてくれる土壌があるから、僕らも安心してファンを増やすことができます。これからのヴェルディを一緒に作っていきましょう。
梅本:今後10年ぐらいの時間の中でFIFAクラブワールドカップに出て、その舞台で下部組織出身の選手が背番号10を付けたバルサに勝つ、という夢のような瞬間を思い描きながらクラブもサポーターもスポンサーも一丸になってヴェルディを作っていけたらと思っています。
そして渋谷のスクランブル交差点がヴェルディの緑一色に染まって、みんなでハイタッチし合えたら楽しいですね。
東南アジアなどに行っても、、バルサのメッシのユニフォームを着ていたりする人がいます。
ヴェルディも同じように世界中どこへ行っても、あの緑のユニフォームを着ているくらい人気あるクラブにしたいですし、実際そのポテンシャルがあると思いますので、これから関わる全ての人とともに、それを作り上げていきたいです。
ヴェルディも同じように世界中どこへ行っても、あの緑のユニフォームを着ているくらい人気あるクラブにしたいですし、実際そのポテンシャルがあると思いますので、これから関わる全ての人とともに、それを作り上げていきたいです。