4日のルヴァン杯決勝は柏とFC東京の対戦!元レイソル長谷川太郎氏が初Vの想い出と見どころを語る
新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていた「YBCルヴァンカップ」の決勝が1月4日に新国立競技場で開催される。今年は柏レイソルとFC東京が対戦する今大会。決戦を前に1999年に柏レイソルのナビスコカップ(当時)初優勝メンバーでもある長谷川太郎さんに、当時の思い出や試合の見どころをお伺いした。
白鸟淳一
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2021/01/03
©️KINGGEAR
新国立競技場で行われる決勝に駒を進めたのは、いずれも3度目の優勝を目指す柏レイソルと FC東京。いずれも決勝進出は3度目という両チームだが、ともに過去の2大会では、勝利を収めてきたという歴史がある。
今回は、1999年のヤマザキナビスコカップ(当時)で、柏レイソルの初優勝に貢献した長谷川太郎さんに、決勝を戦う両チームの印象や、当時の思い出を語っていただきました。
終了間際の同点ゴールでPK決着!柏レイソル初Vで幕を閉じた1999年
©️KASHIWA REYSOL
柏レイソル 2-2 鹿島アントラーズ(PK 5-4)
試合日:1999年11月3日 会場:国立霞ヶ丘競技場
得点:柏:大野 敏隆、渡辺 毅 鹿島:ビスマルク、阿部 敏之
MVP:渡辺 毅
柏レイソル
GK22吉田宗弘、DF4渡辺毅、DF2萩村滋則、DF3薩川了洋、MF5下平隆宏、MF12酒井直樹、MF8バデア、MF24平山智規、MF10大野敏隆、FW9北嶋秀朗、FW11加藤望リザーブ: GK16佐藤大、DF19入江徹、MF15砂川誠、MF13渡辺光輝、FW26長谷川太郎
鹿岛鹿角
GK21高桑大二朗、DF2名良橋晃、DF15室井市衛、DF20リカルド、DF7相馬直樹、MF6本田泰人、MF18熊谷浩二、MF16阿部敏之、MF10ビスマルク、FW13柳沢敦、FW11長谷川祥之
リザーブ: GK1古川昌明、DF4奥野僚右、MF14増田忠俊、MF27小笠原満男、FW9鈴木隆行
リザーブ: GK1古川昌明、DF4奥野僚右、MF14増田忠俊、MF27小笠原満男、FW9鈴木隆行
決勝戦の映像を懐かしそうに見つめる長谷川さん
ー長谷川さんはこの試合、1−2と鹿島アントラーズのリードで迎えた78分から出場。89分の渡辺毅選手の同点ゴールをチャンスメイクし、チームの初優勝に貢献しましたね。
長谷川:僕は毎試合緊張するタイプでしたけど、この決勝戦のピッチに立つ前は、異様なプレッシャーがありましたね。
(得点に繋がったシーンは)僕の後ろに鹿島のDF、室井さんがいました。もし自分が斜めに速く飛んだら、後ろにいる北嶋さんにボールが繋がるかなと思い、必死にジャンプしましたよ。この時は自分の限界を超えましたね(笑)。
ポストプレーが得意な北嶋さんなら「きっと何とかしてくれる」と思っていたので、とにかく何とかボールが繋がってほしいという想いでした。
ーその後は延長戦、PK戦と試合は進むわけですが、どのような感情でしたか?
長谷川:この試合は、負ける気がしなかったんですよね。後半を終えてベンチに引き上げる時に、同点に追いつかれた鹿島ベンチの落胆や、焦りの表情が見えたんですよ。
冷静に状況が見えていましたし、準々決勝のジュビロ磐田戦では洪明甫さんが試合終了間際にゴールを決めたりとか、劇的な試合展開で勝ち進んできた大会でもありました。
なので、同点ゴールが決まった時には「優勝できる」という感覚が湧き上がってきましたね。
長谷川さん提供
長谷川さんが今も大切に持っているという1999年ヤマザキナビスコカップ(現ルヴァンカップ)の優勝メダル。「初タイトル獲得を喜びすぎた」という長谷川さんは、本来はメダルの上枠にあったサッカーボールの装飾をどこかに落としてしまったそうだ。
ー当時の柏レイソルは、勢いのある良いチームだったと思いますが?どのあたりに原因があると思いますか?
長谷川:当時の柏レイソルは、物凄く雰囲気が良かったんですよ。オンとオフの切り替えがうまく、優しい先輩が多かったチームでしたね。
なので、グラウンドでも選手全員の想いが揃っていましたし、チームの価値基準も統一されていたように思います。サッカーでよくあるのが、2−0で勝っているチームが、最終的に3−2で逆転負けを喫してしまうというケースです。
これは相手に1点返されて2対1になったときに、「守り切りたい」守備陣と「もう一点獲りたい」攻撃陣の価値観の統一が出来ていないケースが多いように思います。
当時のチームは、監督の西野さんがすごく簡単かつ、明確でモチベーション上がるような言葉をかけてくれて、とにかくやることに迷いがなかったですよね。意思統一ができていたところも、優勝を勝ち取れた要素の一つかなと思います。
©️KASHIWA REYSOL
ー西野監督は、その後はガンバ大阪などでキャリアを重ねられ、2年前のロシアW杯では、日本代表をベスト16に導きました。長谷川さんにとって、西野さんはどのような方でしたか?
長谷川:僕にとっては、新人として柏レイソルに入団した時の監督が西野さんでした。 例えばシュートの極意とか、サッカー選手に必要な考え方、さらにはプロとしての立ち居振る舞いを教えてくれた方だったなと今振り返ると感じますね。
西野さんは、とあるTV番組で「指導者は想像力が大事だ」と話していました。実際にその言葉通り、西野さんは状況に応じて選手にかける言葉を変えたり、選手起用の組み合わせを考えていたように思います。
現在は僕も引退し、指導者としてサッカーに携わらせていただいていますが、指導する立場になって初めて、当時の西野監督が考えの本質が理解できた部分もありましたよ。
長谷川さん提供 ナビスコカップの優勝記念メダル
ー柏レイソルの初タイトル獲得に貢献した経験は、その後の長谷川さんのサッカー人生にとって、どんな意味がありましたか?
長谷川:僕のサッカー人生で、日本一を獲ったことがありませんでした。プロ選手として育ててもらった柏レイソルの一員として日本一になれたことは嬉しいかったですし、自信になった大会でしたね。
一方で、試合は途中からの出場でしたし、大会前の目標だった「ニューヒーロー賞」も獲得できなかったという点では悔しさもあり、課題も感じさせられました。
あれから22年の月日が流れましたが、あの時の決勝戦に応援に来てくれた地元の方と懐かしい話しに咲かせることもありますし、温かい人たちのいるクラブでプレーできたという思い出は、今でも大切に刻まれていますよ。
©️KASHIWA REYSOL
ー今年のルヴァンカップは、柏レイソルとFC東京の対戦。注目は何と言っても、柏レイソルのFWオルンガ選手です。一昨年は、1試合8得点の新記録。昨年はJリーグのMVPも獲得しました。同じFWとしてどのような印象をお持ちですか?
長谷川:オルンガ選手は「規格外」ですよね。身体をぶつけられても跳ね返す足の長さや、動き出しのうまさなど、プレーを見ていて楽しい選手です。
そして柏レイソルのチャント(応援歌)に、バックドロップシンデレラが歌う「さらば青春のパンク」の替え歌があって、あれ(「突き進め柏」)がすごく良いですよね。 聞くだけで乗れますし、「僕が現役の時にもあったらよかったのにな」と思って見ています(笑)。オルンガ選手が得点を量産できるのは、もしかしたらあの応援歌のおかげかもしれませんね。
ーーオルンガ選手が更新する前の記録は、バレー選手(ヴァンフォーレ甲府)が持つ1試合6得点でした。この記録が生まれた2005年の「J1・J2入れ替え戦」(柏レイソル対ヴァンフォーレ甲府)には、長谷川さんも甲府の選手として出場されていらっしゃいましたね?
長谷川:バレー選手は相手選手にぶつかられても、それでもなおゴールに向かっていく選手。本当に大事な試合や、チームが得点の試合欲しいタイミングで点を取るんですよ。
「気負ってしまいそうな場面」でも決めてくる、気持ちの強さがある選手でした。オルンガ選手とは違う凄さがありましたね。
6得点を決めた「J1・J2入れ替え戦」も、バレー選手は、ブラジルで得点王を獲った選手の真似をして、スパッツの切れ端を頭に巻いてから試合に臨んでいました。
ブラジルの選手は、神様のような普段は見えないものを信じる力が強いんですかね。ゴールに対する気持ちの強さを、この時は感じました。
個人的には「育ててもらった柏を相手にゴールを決めたい」という想いで、この試合に臨みました。
でも、気持ちが空回りしてしまった部分もあり、自分としては悔しさの残る結果に終わってしまいました。そういった背景もあったので、余計にバレー選手のFWとしての凄さを感じましたね。
©️KASHIWA REYSOL
ーールヴァンカップの決勝は、初の新国立競技場で開催です。決勝を戦う皆さんへのメッセージをお願い致します。
長谷川:1999年当時は、温かい雰囲気の良いチームでしたね。今は、知っている人も少なくなってしまいましたが、もう一度柏レイソルの皆さんが喜んでいる姿を見たいですね。
FC東京にも、甲府でお世話になった安間貴義さん(FC東京トップチームコーチ)や、徳島で一緒にプレーした丹羽大輝も在籍していますが、やっぱり個人的にはレイソルに勝ってほしい。
ジュニアユースからプロ選手に育ててもらったチームですし、柏レイソルは僕にとって特別なクラブ。 本当に応援しています。
今でも柏の練習場や日立台のピッチを見ると、プロ選手になるために頑張っていた青春の思い出や、感慨深い気持ちが込み上げてくるんですよ。
©️KINGGEAR 決勝が行われる新国立競技場 YBCルヴァンカップの開催は初となる。
ー決勝はどのような試合になると思いますか?
長谷川:柏レイソルはオルンガ選手やクリスティアーノ選手。一方のFC東京は永井謙佑選手、ディエゴ・オリヴェイラ選手。 素晴らしいFWが揃う両チーム。ですが、堅い守備も備えているので、もしかしたらスコアレスな時間帯が続く試合になるかもしれません。
新型コロナウイルスの影響で、まだまだ暗い社会状況が続いています。毎年劇的な展開が多いルヴァンカップなので、出場される選手の皆さんには、「見ている人がワクワクするプレー」や「ゴールにチャレンジするプレー」を見せて欲しいなと思います。
長谷川太郎 プロフィール
【ポジション】FW 【経歴】
柏レイソルユース→柏レイソル→アルビレックス新潟→ヴァンフォーレ甲府→徳島ヴォルティス→横浜FC→ギラヴァンツ北九州→浦安SC→ムハンメダンSC(インド)
【成績】
J1通算 51試合出場 8ゴール J2通算 149試合出場 25ゴール
1999年:ヤマザキナビスコ杯優勝 2005年:J2日本人得点王
【取材協力】柏レイソル
【相关链接】一般社団法人TRE
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