日本サッカー界を変えるドコモ×Jリーグの「協賛と提供」を超えた関係性とは
Jリーグは現在「60クラブがそれぞれの地域で輝く」「トップ層がナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」というテーマを掲げている。その発展に欠かせない存在が大手通信会社のNTTドコモだ。国内最大手の通信業者がサッカー界にもたらすメリットとは何か。「FRONTIER OF SPORTS」第8回は「ドコモ×Jリーグ 海外クラブ誘致の裏側」をテーマとして、その舞台裏に迫る。※トップ画像出典/photoAC
「一緒にサッカーを高めていくことができる」 ドコモがJリーグに与える強みとは
地域との結びつきの強化を目指す日本サッカー界。Jリーグ執行役員を務める中村健太郎氏は「サッカーを応援することは、地域の皆さんの幸せに直結すると考えています。勝てば1週間楽しい。負ければ1週間憂鬱。時には選手やクラブにキツい態度も取るほど、生活の一部になっています」と話す。
実際に信州ダービー(松本山雅FC対AC長野パルセイロ)や、みちのくダービー(ベガルタ仙台対モンテディオ山形)など、地方開催でも観客動員が1万人を超える興業もある。しかし中村氏は「まだまだスタジアムに空席が目立っていて、人気は今以上に出せると考えています」と現状には満足していない。そのために欠かせない存在がドコモのデジタルコンテンツにある。
ドコモは決済方法である「d払い」を通じて、利用者の生活スタイルを把握している。さらに「d払い」をスタジアムでも利用できるように促進したことで、サッカー界の情報も掴めるようになった。NTTドコモエンターテイメントプラットフォーム部の鈴木彰訓氏は、「d払いを通じてどんなお客さんがアウェイ(地域)に足を運んでいるかがわかります。スポンサーにその情報を提供して、クラブにはそこから新たな収益の構造を考えてもらえる。Jリーグ側が持っていない情報を与えて、一緒にサッカーを高めていくことができるのが我々の強みです」と語る。
Jリーグのさまざまなサービスを利用できる会員IDサービス「JリーグID」の利用者が約400万人なのに対し、ドコモの「dアカウント」は約9900万人と規模が大きく異なる。通信大手の力を借りることで、これまで見えなかったものが確実に見えるようになった。
Jリーグとドコモ両社にメリットが。プレシーズンマッチのねらいとは
「トップ層がナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」というテーマを実現するために、Jリーグは2017年から海外強豪クラブを招致し、日本のクラブと対戦するプレシーズンマッチを行っている。コロナ禍の中断を経て、2023年からJリーグとドコモの共催として復活した。この取り組みは相互にメリットがあると言う。
Jリーグにとっては、日本のクラブの強さをアピールできる場になる。中村氏は「我々は日本のクラブを誇りに思っています。ヨーロッパのクラブと戦えることを示せれば、Jリーグに対する目線が上がりますから」と力を込める。
ドコモにとっては、会社の目指す「スポーツとエンタメの融合」が叶う場になる。「明治安田Jリーグワールドチャレンジ2024」では、試合前にボーイズグループの「NEXZ」がパフォーマンスを行い、会場を盛り上げた。鈴木氏は「アーティストのファンを呼んで、その方たちに試合も見てもらって『次はJリーグも見に行こう』と思ってもらおうと。我々からすれば、どちらの観点からでもいいんです。サッカーしか興味のない人がアーティストの虜になってもらってもいいんです。興業を通じて楽しかったと思ってもらえれば、それがドコモの目指す総合エンターテインメントの姿です」とうなずく。
またプレシーズンマッチの来客状況分析を通じて、判明したことがある。ドコモのデータによるとJリーグのリーグ戦と比較して、来場者の年齢が3~5歳若いとわかった。この結果をシーズン戦にも活用し、日本のサッカー界への集客増加を目指していく。
2024年のプレシーズンマッチは京都と広島の地方開催だった。Jリーグはテーマである地域との関わりを実現させるため、地方での試合実施を条件に、招致する海外クラブを決めた。中村氏は「イギリスやフランスのクラブは国立競技場でやらせてくれと。一方、ブンデスリーガのチームは地方でやりたいと言ってくれました」と舞台裏を明かした。その上で「京都、広島の周辺に住んでいる方でまだサッカーを見たことのない人に来てもらいたい。日ごろからJリーグを応援している方には、チームが海外相手にいかに勝負できるのかを見てもらいたい」と展望を明かした。
日本サッカー界の発展を目指して 両社の今後の展望
今後もJリーグとドコモの関わりは続いていく。ドコモを代表して鈴木氏は「60クラブには60のドラマがあります。そこにドコモのデータを活用して、クラブが発展できることをやっていきたい。また、我々NTTグループは最新のテクノロジーを持っています。それを駆使して国立競技場に活用して、“新しいスタジアムの形”を作り上げたい」と意気込む。
中村氏は「ビジネスを仕掛ける時に、コンテンツとスタジアムが一緒にできるといいんです。ショップの設営でクラブ一色の色を打ち出すとか、興行とスタジアムのハードウェアを連動させることができるといいなと。それをドコモさんと一緒に作り出していきたい」と話す。Jリーグはドコモという強力な支えとともに、日本サッカー界をさらに盛り上げていくつもりだ。
『FRONTIER OF SPORTS』フロスポ #8 ドコモ×Jリーグ 海外クラブ誘致の裏側より
配信日:2024年7月26日(金)
※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています