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【2025年シーズンに向けておさらい】2024年第32節サンフレッチェ広島vsFC町田ゼルビアとの一戦をプレイバック
明治安田J1リーグ第32節2024年9月28日にエディオンピースウイング広島で行われた、当時1位サンフレッチェ広島vs2位FC町田ゼルビアとの一戦。今季バランスの取れた強さでトップに立つ広島、そしてJ1今季の中で“アウェイ勝率”が断トツで1位のFC町田との戦いを、元プロサッカー選手の槙野智章氏の解説とともに振り返る。※トップ画像出典/Getty Images
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1位vs2位の息を付かせぬ攻防(明治安田J1リーグ第32節2024年9月28日)
首位サンフレッチェ広島と2位FC町田の一戦は、序盤から広島が攻勢に出た。
槙野氏は「このシーンを見ると、今日の広島がこの一戦にかける思いだったり、どうやって準備してきたのか。そして町田がどうやったら嫌なのかというのが、この時間とこのシーンでわかった気がします」と話した。東俊希選手に関しては「反対サイドからクロスが上がることに対して、ボックス内に入る動きが、この試合目立っていた」と語る槙野さん。試合開始早々、積極性のある動きで果敢にゴールを攻める広島を称賛した。
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前半3分、中野就斗選手からのクロスボールを受けゴンサロ・パシエンシア選手が合わせて先制点を決める。「広島がボールを保持する時間帯が開始早々ある中で、相手の裏にボールを出すこと、そこでセカンドボールを前向きで拾えた川辺駿選手の回収も良かった。右サイドでボールを持った中野選手の1対1を仕掛ける強気な姿勢。中の枚数とタイミングが絶妙に合っています」と槙野氏。
更に、得点を決めた際の映像を振り返る。クロスを挙げたタイミングで、逆サイドの東選手もボックス内まで入ってきている攻めの姿勢に、「広島のクロスに対して普段からのトレーニングの成果が出ている」と、ここも評価できるポイントのようだ。
広島はセットプレーでも魅せる。蹴ると見せかけてショートパスでマークしていた相手選手のタイミングを外したり、トルガイ・アルスラン選手がわざとブロックしつつ大外を空けてボールの着地点を上手く誘導しているなどのテクニックも。槙野氏曰く、こうしたプレーも広島の強みだという。
前半14分、FC町田のフリーキックに合わせたシュートをドレシェヴィッチ選手が放つも、リードを守る広島がセーブ。このプレーには槙野氏も「ここを踏ん張れたことがかなり大きかった」「これを決められていると、またゲーム展開も大きく変わった」と、この攻防が試合の要所であったという見解を語った。
この試合で槙野氏が特に注目していたのが、広島の松本泰志選手。「松本のボールの回収率の高さ、そしてボールを落ち着かせる頭脳的なプレー、そこら辺のメリハリが効いたプレーがかなり大きかったですね」と同試合での松本の健闘を称えた。
守りながらも追撃する広島の強さ
広島の良さは2列目のオーバーラップであるという。DFラインの選手が攻撃に参加する時間の作り方が非常に上手なのだ。「シンプルにボールを蹴ることによって後ろ向きの守備を相手にさせる事。これが本来FC町田がやりたい事で、相手のクリアミスだったり自分たちは前向きな守備でセカンドボールを拾うという事が徹底して広島ができていました。逆にFC町田は自分達でやりたい事を広島にやられていたという感じがしましたね」と、今回FC町田の思惑とは裏腹に、広島が流れを掌握していたという試合の攻防戦に私見を述べた。
流れをどうにか取り戻したいFC町田は、広島からボールを奪い前線へ早いパスを繋ぎ、攻めの姿勢を見せる。最速最短でゴールに向かっていくというアグレッシブな姿勢は、本来FC町田がしたいサッカーのスタイルだという。しかし積極的に攻めるFC町田に対し、広島は最終ラインのコンパクトな陣形と、ボールホルダーにしっかりとプレッシャーを与えることで良いラストパスを出させなかった。
前半23分、ピッチの中央部分でファールを受けた広島は、すばやくリスタートしパスを繋ぎ更に追加点を重ねた。
このゲームの再開の早さと、ボックス内に集まった選手層の厚さに「ここぞという時や点を取るときのスピードアップ、攻撃の矢印がはっきりしている」と広島の攻撃の優れた点を挙げた。
後半は、FC町田の藤本一輝選手が左サイドから細かくパスを繋ぎ最後は仙頭啓矢選手がゴールに蹴り込むも阻まれた。更に果敢に攻めるも、広島の中野選手にボールをカットされ得点に繋がらず。試合は2-0のまま、サンフレッチェ広島が頂上決戦を制した。
2025年シーズンも注目の広島と町田。選手一人ひとりの活躍はもちろん、戦術にいたるまで期待が高まる。
『やべっちスタジアム』#177(2024年9月30日(月)07:00~)より
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