冬は寒い？夏は危険？Jリーグの「秋春制」移行の論争がもたらす変化とは

6年ぶりに議論がスタートした「秋春制」移行論

現在は2月から11月の「春秋制」で行われているJリーグだが、「秋春制」に移行するかどうかが議論されている。これはヨーロッパリーグと同じ8月あたりから5月頃までの開催期間に移行するというものだが、多方面へのインパクトがあまりにも大きく、結論が出されないまま、月日が流れていた。しかし、AFCチャンピオンズリーグの秋春制移行や2026年に行われる国際Aマッチウインドーの開催時期変更により、Jクラブが日程面で不利な状況に置かれることが想定される。そこで、うやむやになっていた秋春制移行論が再浮上。早ければ2026-2027シーズンにJリーグが秋春制に移行する可能性が出てきたのだ。

コミュニケーション不足が招いた誤解。サッカーは夏にやるスポーツではない？

そもそも、この「秋春制」移行論は、ここまで何度も議題にあがりながらもなぜ進まなかったのか。Jリーグ実況を行う桑原学氏はこう話す。

「これはもう間違いなくサポーターの方々、Jリーグファンの皆さんとのコミュニケーション不足です。これは我々も含めてもっと勉強しなきゃいけないんですけれども、今問題とされていることがいくつかあるんですけど、それは実は誤解されてることがとても多い。例えば、どの時期に試合をやるのかとかやり方とか、本当に根本のところを誤解されていると思います」

問題とされていることの1例として、豪雪地帯のクラブやファン・サポーターから不安の声があがっていることに触れるも、そこには誤解があると言う。それについて、ジャーナリストの小澤一郎氏も「実際、今の現行シーズンとはあんまり変わらないです。1月にウィンターブレイクに入るとか」と補足。桑原が話すように、やはり根本的な部分が周りに伝わっていないのだろう。

一方、現在の開催期間を変更すべきとの声もある。日本プロサッカー選手会長吉田麻也氏は、「この夏の暑さで試合をするのは、もはや生命の危機を感じる。危ない。サッカー面でいうと、パフォーマンスだとか強度だとか言うけど、シンプルに危ない。これはもう雪とか以前の問題」と夏場のサッカー活動に警鐘を鳴らす。

これについて、サッカージャーナリストの細江克弥氏は「吉田麻也選手のあの『生命に関わる』っていう言葉は、結構みんなグサッと来たと思うんですね。確かにそこにはあまり意識が届いていなかった気がする。そういうことも考えなきゃいけないなと思います」と、プレーする選手についてももっと考えるべきだと語った。

もう推し進めるしかない？ 外堀を埋められたJリーグ

秋春制に移行するとしたら、ファン・サポーターの理解獲得、スタジアムや練習場などの環境整備、予算確保など、解決すべき課題は山積みだ。しかし、「（ACLや国際Aマッチウインドー開催時期の変更により）もう外堀を埋められていると思うので、Jリーグがしっかりアナウンスをして、メリットもデメリットも両方あると思うが『移行する』とトップダウンで（落とし込むしかない）」と小澤は持論を明かす。課題をどうクリアしていくのかを考えるフェーズに入ったJリーグは、ハレーションが強い中で推し進めるしかないのかもしれない。最後に桑原は、「1つだけ押さえておいていただきたいのは、冬の試合が極端に増えるわけではないし、夏の試合が全部減らせるわけではないということ」と念を押す。少なくともこの点に関する誤解はいち早く解消するべきだろう。

秋春制に移行することで、選手が移籍しやすくなるというメリットがあることも忘れてはならない。すべてが上手く行くことはないにしても、Jリーグの明るい未来のための決断を切に願う。

『Football Freaks＃103  Jリーグファン必見！『秋春制』を大議論』より
配信日：2023年8月23日（金）

※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています