町田DF“望月ヘンリー海輝”、J1の洗礼と日本代表初招集ーーその中で見えてきた“自分らしさ”とは
「緊張してないと思ってた。でも、映像を見たら…顔がガチガチだった。」 J1デビュー、初アシスト、そして日本代表初招集。順調に見えるキャリアの裏には、プレッシャーと向き合いながら、一歩ずつ前に進んできた望月ヘンリー海輝の姿がある。自信はない。それでも、“できなかったことができるようになる”ことが楽しい。プロ1年目の彼は、逃げずに壁に立ち向かい続けた。FC町田ゼルビア所属・望月ヘンリー海輝。大きな体と、まっすぐな心で、Jの舞台に挑み続けるサイドバックの今を追う。※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

顔がガチガチだった初出場。「緊張してない」と思っていたけど
──プロでのデビュー戦を終えて、どんな気持ちや変化がありましたか?
まず思ったのは、「レベル高けぇ…」ってことですね。自分が入ったときは、試合展開がかなり厳しくて、まさに“壁”のように感じました。宇佐美選手にスーパーゴールを決められて、左サイドの黒川選手には何度も抜かれて…。
その中で特に痛感したのは、自分の精神的な未熟さでした。試合の入り方、心の準備、プレーに対する集中。ボールに触れる機会が少なかったぶん、技術というより「メンタル」の部分の差を強く感じた試合でした。「もっと準備しなきゃダメだ」と思わされた、忘れられない一戦です。
──試合前に緊張したりするタイプですか?
昔はかなり緊張してました。でも、その緊張に自分で気づけていなかったんです。初出場だったガンバ戦のときも、「意外と緊張してないな」って思ってたんですけど、試合後に映像を見返したら…顔がガチガチで(笑)。「あ、自分めっちゃ緊張してたんだな」って後から気づきました。
ー─ある意味、自然にその世界に飛び込めていたのかもしれませんね。
そうかもしれません。多分、視野が狭くなってて、目の前のことしか見えてなかったんでしょうね。気持ち的にも、ひとつのことで頭がいっぱい、という状態だったと思います。
──実際にJ1の選手たちと対峙して、肌で感じたレベル感もあったと思います。そこからの過ごし方や日々の取り組みは、どう変わっていきましたか?
メンタル面では、「やっていくことでしか自信はつかない」と思っていたので、とにかく前向きに過ごすようにしていました。練習に対しては、「不安にならないくらい練習しよう」と意識していて、特に対人プレーは重点的に取り組んでいました。
チーム内にも本当にレベルの高い選手が多くて。たとえば、勇紀くん(相馬)、セフンさん、雄太さん(中山)など。
毎日の練習が、すでに試合みたいな感覚で、「どう対応していくか」をずっと考えてましたね。自信はすぐにはつかない。でも、向き合うしかない——そんな気持ちでやってました。
「足りてない。でも、それが楽しい」成長に夢中になれるという才能
──そんな日々の中で、「これならやっていけるかも」と手応えを感じたのは、どのタイミングだったんですか?
うーん…正直、あまり明確な手応えはなかったんですよね。
守備に関しては、「ある程度抑えられるかも」と思えたのがシーズン終盤の10月や11月。初スタメンのときなんかは、相手にボコボコにやられた印象があって、「今、自分がこのピッチに立っているのは、J1のレベルに到達したからじゃなくて、まだ“追いついている最中”なんだな」って感覚が強かったです。
「足りてない」と思う気持ちが常にあって、それをどう埋めていくかを考える日々でした。
──それは、自分と周囲を比べるというより、自分自身の基準に対する感覚ですか?
そうですね。誰かと比べてどうこう、っていうよりは、自分が理想とするプレーや状態に対して、今どれくらい近づけているか。それを毎日意識しながら取り組んでいたので、明確な「手応え」はなくても、ちゃんと前に進んでいる実感はありました。
──プロとしての日々のチャレンジの中で、望月選手にとってサッカーは今、どんな存在になっていますか? 楽しさや喜びはどう感じていますか?
自分にとっての楽しさは、「できなかったことができるようになる」ことです。たとえば、止められなかったボールが止まるようになったり、蹴れなかったところに蹴れるようになったり、見えなかったスペースが見えるようになったり。小さな成長でも、その“変化”が実感できた瞬間にすごく喜びを感じます。
──そういった感覚は、プロになる前からずっとあったものなんですか?
そうですね、大学2年生くらいから自然と持つようになった感覚です。プロを意識しはじめた時期とも重なっていて、そこから練習の質や準備への意識も変わっていきました。「もっと上手くなりたい」っていう気持ちが強くなって、日々の成長がサッカーをもっと楽しくしてくれるようになったんです。
初アシストと、初代表の衝撃──“手応え”と“絶望”のあいだで
──昨シーズンのプレーで振り返って印象に残っているプレーはありますか?
やっぱり、初アシストのシーンですね。J1第9節のFC東京戦、小さい頃から得意だった“裏抜け”の動きからクロスを上げて、アシストにつなげられた。あれはまさに、自分のスタイルが出せた瞬間でした。普段から狙っている形だったので、嬉しさも大きかったです。
──今後もそういうプレーをどんどん見せていきたい?
はい、もちろんです。スピードと縦の推進力、そこは自分の持ち味なので、もっと出していきたいと思っています。
──そして、昨年は日本代表の合宿にも呼ばれました。あの経験はどんな位置づけになっていますか?
自分にとっては、本当に大きな経験でした。
トップレベルの選手たちの技術、メンタル、日々の過ごし方……どれを取っても圧倒的で、「こういう姿勢で日々やってるから、このレベルに行けるんだな」と強く感じました。
単なる“憧れ”じゃなくて、彼らの基準を“体感”できたことは、自分の中でかなり大きいです。それまでJ1の中だけで完結していた自分の視野が、一段階広がったような感覚がありました。
──逆に、代表で「難しい」と感じた点は?
うーん…正直、全部ですね(笑)。
フィジカル的には多少通用する場面もありましたけど、技術と判断のスピードはまったく違いました。練習中も、パスのスピードが速い中でギリギリの判断を求められたり、自分が今まで経験したことのないテンポでプレーしなければならなかった。
なんというか、「自分だけ異物」みたいな感覚があったんです。みんなが自然にこなしていることに、自分だけが必死に食らいついている——そんな状況が苦しかったですね。
“緊張”から“集中”へ。変わったのは、エネルギーの使い方
──代表活動を経て、シーズンの残り試合では、メンタル面に何か変化はありましたか?
ありましたね。9月の代表合宿は、自分の人生の中で一番緊張した経験だったと思います。でも、あれだけの緊張をちゃんと直視して、向き合うことができたからこそ、それ以降は「あのときよりはマシだな」と思えるようになった。少しですけど、心に余裕が生まれました。
──その余裕は、具体的にどういう効果を生んだと思いますか?
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
一言で言えば、“エネルギーの使い方”が変わったという感覚です。緊張していると、どうしても入りが硬くなったり、視野が狭くなったりして、プレーに集中しきれないことがあるんですけど、今は違います。状況を落ち着いて見て、次のプレーをイメージできるようになってきた。緊張にエネルギーを奪われるのではなく、そのぶんを“サッカーそのもの”にちゃんと向けられるようになった感覚があるんです。
望月選手を応援しにスタジアムへ!
▼試合情報
日程:4月13日(日)14:00キックオフ
対戦:浦和レッズ
場所:国立競技場
チケットは▷点击这里
望月ヘンリー海輝(もちづき・へんりー・ひろき)
2001年9月20日生まれ、埼玉県出身。ポジションはDF。上福岡サンダース、大宮アルティージャU-12、三菱養和サッカークラブを経て国士館大学に進学。2024年より町田ゼルビアに所属し同年2月にJ1デビューを果たす。同年8月と10月にFIFAワールドカップ2026アジア最終予選の日本代表メンバーに招集された。
Photo:Rika Matsukawa