異業種コラボレーションで未来を切り拓く――池内光が語るBEAMS CREATIVEの挑戦!
株式会社 ビームス クリエイティブ代表取締役の池内光さんは、異業種とのコラボレーションを通じて、BEAMSの新たな価値を創出し続けている。ファッションからライフスタイル全般に広がるビジョンと、コラボの背景にある戦略について伺った。※トップ画像:撮影/長田慶
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2024/06/17
BEAMSの歴史と異業種コラボの始まり
――BEAMS CREATIVEが異業種のコラボを行う理由や背景について教えていただけますか?BEAMSはセレクトショップとして、ファッションの最前線で活動してきました。歴史的には48年目を迎え、多くの支持をいただいています。
異業種とのコラボレーションの背景には、BEAMSに対する期待があると思います。元々は取り扱い商品を通じてナイキさんやアディダスさんらとのコラボレーションを行ってきた歴史があり、近年はそこから派生してさまざまな企業と一緒に商品に留まらない取り組みを行っています。多くの企業から「BEAMSとなら、おもしろいことができるかも」と期待され、ジャンルを問わないコラボの相談を受けることが増えており、私が代表を務めるBEAMS CREATIVEは、そういったご相談に対応する、法人向けのビジネスを展開しています。
私たちセレクトショップは、いいと思うものを選んで提供するのが基本なので目利き力を強みとしています。ただ、通常では選ばないどんなものにも魅力はあり、その魅力に光を当てることで、新たな価値を生み出すこともできます。この編集力を法人向けビジネスに転用することができています。
また、異業種とのコラボレーションは、我々が単独では展開できない領域にも進出することができます。これにより、より多くの人々に喜んでもらえるような取り組みができるとも考えています。こういった背景があり、BEAMSは異業種コラボを行っています。
スポーツカルチャーとファッションの融合が見据えるものとは?
摄影/永田圭
――スポーツ業界などの異業種とのコラボレーションで得られる最大のメリットは何ですか?元々スポーツブランドとのコラボや、商品の販売を行っています。ストリート系のサーフィンやスケートボードなど、カルチャーとしても近い領域での取り扱いもしています。
ただ、ファッションとしてのBEAMSのイメージは強い一方で、スポーツとしてのBEAMSのイメージはまだまだ弱いと感じています。我々はもっとスポーツの領域にしっかりコミットしたいと思っています。スポーツチームのみなさんからは、ファッション性やおしゃれな見た目を期待されることが多いです。
ファッションを主業としてきた私たちは、その競技の歴史や文化背景も理解した上でファッション性の高いデザインやサイジングなどを提供できるので、完成したウエアは応援の時はもちろん、普段でも着用することができると、チームやサポーターの方々から評価をいただくことが多いです。こういったアプローチで、スポーツカルチャーとファッションの融合にチャレンジしたいという思いが強くあり、その取り組みを一緒に進めていけるのは非常にありがたいことです。
摄影/永田圭
「大名古屋展」と「鯱の大祭典」では、名古屋グランパスさんと5回にわたるコラボレーションが実現しており、この取り組みをさらに深めて、スポーツカルチャーとファッションの可能性を拡大していきたいです。摄影/永田圭
――2016年に始まったBEAMS JAPANが、日本の魅力を国内外に発信するというテーマを掲げてから約8年経ちました。今、感じる成果や思い出に残っていることはありますか?BEAMSは、世界のいいものを日本に紹介することからスタートしました。その過程で、日本にも非常に魅力的なものがたくさんあることに気づき、それらを紹介することを事業にしたのがBEAMS JAPANです。海外であれ国内であれ、従来とは異なる方向から光を当てることで、商品やサービスに新たな魅力を発見し、その魅力をお客様に伝えることは、私たちのアイデンティティのひとつです。
海外のお客様という面でいうと、近年インバウンドの観光客も増えてきて、日本に興味を持っている人が多い中で、日本の多様な魅力を紹介することの意義は非常に大きいと感じています。現在BEAMS JAPANは7店舗を運営していますが、店舗からだけではなく、「大名古屋展」などのBEAMS JAPANの多様な取り組みを通じて、より多くの人に日本のよさやおもしろさを感じてほしいと考えています。
BEAMS JAPANが行ったコラボレーションとしては、2019年から続いている牛乳石鹸さんとの「銭湯のススメ」が印象深いです。牛乳石鹸さんからは、液体石鹸に押されてシェアの下がった固形石鹸の価値を見直すご相談を受けました。当初は限定的なコラボ商品をイメージして打ち合わせがスタートしたのですが、お話を重ねる中で、それだけでは本質的な課題解決にならないと担当者が感じ、銭湯の文化を継承するための取り組みを行うことに至りました。
このように、単なるコラボレーションにとどまらず、企業の課題を解決し、日本の文化を守るための取り組みを行っています。「銭湯のススメ」は、2024年までに4回行われています。これは私たちが行っている異業種コラボの姿勢をあらわす一つの成功パターンとして非常に思い入れのある事例です。
日本だけではなく世界各国でカルチャーをつくることにも力を入れたい
摄影/永田圭
――BEAMS CREATIVEの代表として、今後の目標についてお聞かせください。私たちBEAMSは48年間、小売業として一貫して活動してきましたが、現在ではBEAMS CREATIVEが法人向けのビジネスにも積極的に取り組んでいます。グループ全体として小売ビジネスが大黒柱であることに変わりはありませんが、これからの国内の需要状況や海外ビジネスの可能性を考えると、まだまだやれることがたくさんあると感じています。
今後はセレクトショップの一面としてだけでなく、より多様な領域にコミットできるように発展させていきたいです。創業以来、国内で新しいファッションを紹介することで、若者たちの新しい文化をつくってきたように、海外の進出国においても、いま私たちが得意とするアートやカルチャーをファッションと絡めて紹介したりコミニュティづくりを手伝ったりすることで、カルチャーメイキングしていきたいと考えています。
BEAMSのブランド価値を健全に高めるためには、法人向けのビジネスと小売ビジネスの両方が相互に影響しあうことが重要だと考えます。二つがお互いのビジネスへの影響を高めることを意識しながら活動し、結果としてBEAMS全体にいい結果をもたらす好循環を生み出すことが理想です。
現在、収益の大部分は小売ビジネス業から得ていますが、BEAMS CREATIVEの法人向けビジネスも、今後はBEAMS全体への影響力においては同等を目指し、相乗効果を生み出す循環型の仕組みをづくりを加速させたいと考えています。