パリ五輪・日本人メダリストの活躍と注目の戦いを総括(大会16日目②)
現地時間7月26日に開幕したパリ五輪も、8月11日の閉会式をもって17日間にわたる熱戦に幕が落とされた。ここでは8月11日(日本時間8月11〜12日)の大会16日目にメダルを手にした日本人選手たちの活躍や、注目選手の戦いぶりを振り返る。※トップ画像出典/Getty Images
大会16日には、陸上の女子やり投げの北口榛花、レスリング女子62kg級の元木咲良が金メダル、レスリング男子フリースタイル74kg級の高谷大地、男子高飛び込みの玉井陸斗、近代五種の佐藤大宗、卓球の女子団体(早田ひな、平野美宇、張本美和)が銀メダルを獲得した。
レスリング女子62kg級 元木咲良 金メダル
レスリング女子フリースタイル62㎏級に出場した元木咲良は、東京大会銅メダリストのイリナ・コリアデンコ(ウクライナ)と決勝で対戦した。序盤、消極的なプレーにより元木は1ポイントを失ったものの、「アンクルホールド」などでポイントを重ねると、最後は12-1でテクニカルスペリオリティ勝ちを収め、金メダルを獲得した。
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得意技の「アリエフ」を駆使しながら攻撃を繰り広げた元木は、初戦でクリスタトゥンデ・インツェ(ルーマニア)に4-0でフォール勝ち。準々決勝でもアナパウラ・ゴディネスゴンサレス(カナダ)に11-0のテクニカルスペリオリティ勝ちを収め、順調にトーナメントを勝ち上がった。
だが、グレイスジェイコブ・バレン(ノルウェー)と対戦した準決勝では、2-2で迎えた第2ピリオド早々、相手のタックルから一挙に4ポイントを奪われるなど、5ポイントのリードを許す
苦しい展開に。だが果敢に攻め続けた元木は残り2分を切ったタイミングで「そり投げ」を決めて4ポイントを奪い、そのままバレンの両肩をマットにつけてフォール勝ち。劇的な逆転で決勝へと駒を進めた元木は、決勝では危なげない戦いでコリアデンコ(ウクライナ)を相手にテクニカルスペリオリティ勝ちを収め、見事に金メダルを獲得した。
男子フリースタイル74kg級 高谷大地 銀メダル
レスリングの男子フリースタイル74kg級に出場した高谷大地は、決勝でラザンベクサラムベコビッチ・ジャマロフ(ウズベキスタン)と対戦したが、第1ピリオドの2分過ぎに4ポイントを取られると、さらにエビ固めをかけられて0-5でフォール負けを喫し、銀メダルを獲得した。
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得意のタックルを軸に積極的な攻撃を見せた高谷は、1回戦でジーンドリー・ガルソン・カバジェロ(キューバ)、準々決勝ではヘティク・ツァボロフ(セルビア)にいずれも10-0のテクニカルスペリオリティ勝ちを収めると、準決勝では東京大会銅メダリストで世界ランキング1位のカイルダグラス・デイク(アメリカ)と相見えた。激しいポイントの奪い合いとなった試合を20-12で制した高谷は決勝進出を果たしたものの、金メダルを懸けた一戦でジャマロフに屈し、銀メダルを手にした。
飛び込み男子高飛び込み玉井陸斗銀メダル
14歳で出場した東京五輪で7位入賞を果たした玉井陸斗が男子高飛び込みに出場し、金メダルを獲得し、日本人選手として初めて飛び込み種目で表彰台に上がった。
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男子高飛び込みは、高さ10mの飛び込み台から6回の演技を行い、姿勢の美しさや水しぶきの少なさなどを競う種目。17歳の現役高校生ながらも自身2度目の五輪を迎えた玉井は安定した演技を見せて予選2位(497.15点)で準決勝進出を決めると、準決勝でも1本目に86.40点、6本目に高難度の「5255B」(後ろ宙返り2回半ひねりエビ型)を決めて97.2点を記録。難度の高い演技で得点を重ね、トータル477・00点の3位で決勝に駒を進めた。
決勝で玉井は、2回目の飛び込みで高難易度の「207B」を決めて95.40点をマークして一時はトップに立つも、3回目に入水が乱れるミスが出て3位に順位を落とすことに。だが6本目の飛び込みで自身が得意とする「5255B」を決めて99.00点の高得点を記録。合計507.65の2位で競技を終え、銀メダルを獲得した。日本選手が飛び込みでメダルを獲得したのは初のことだ。
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スポーツクライミング女子複合(ボルダー&リード)森秋彩4位 野中生萌9位
スポーツクライミングの女子複合に日本の森秋彩と東京大会銀メダリストの野中生萌が出場し、森は4位、野中は9位で大会を終えた。
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五輪初出場の森は準決勝を4位(2種目合計150.1ポイント)で終え、上位8選手によって争われる決勝進出を決めたが、ボルダーの第1課題で高めに設定されたスタートに届かずに0点となった。だが、その後巻き返しを見せた森はボルダーを7位で終えると、リードでは完登に迫るクライミングを披露。東京大会の王者で本大会でも金メダルを獲得したヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)を上回る96.1ポイントの高スコアを叩き出したがメダルにはわずかに及ばず、4位で大会を終えた。
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前回大会銀メダリストの野中生萌は、準決勝でリードの得点が全体10位の51.1ポイントと伸び悩み、決勝進出ラインの上位8位以内に残れず、9位で準決勝敗退に終わった。
女子ゴルフ 山下美夢有 4位 笹生優花 54位
昨季最年少で2年連続の賞金女王に輝いた山下美夢有と、海外メジャー2勝の笹生優花が女子ゴルフに出場。山下はメダルまで1打差に迫る通算6アンダーの4位、2度目の五輪出場の笹生は通算17オーバーの54位で大会を終えた。
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最終日を首位と2打差の3位でスタートした山下は、14番と15番の連続バーディーを含む5つのバーディーを奪ったものの、2つのボギーやダブルボギーを叩くなど不安定なゴルフでスコアを1つ落とし、通算6アンダーの4位で大会を終えメダル獲得はならなかった。
最終日を42位でスタートした笹生は最後まで挽回できず、前日からスコアを10落として通算17オーバーの54位で4日間を戦い終えた。
【順位】
1位:リディア・コ(ニュージーランド) -10
2位:エスター・ヘンゼライト(ドイツ) -8
3位:林希妤(リン・シユ、中国)-7
4位:山下美夢有(日本)-6
54位:笹生優花(日本)+17
ブレイキン男子 半井重幸Shigekix 4位
パリ五輪唯一の新競技ブレイキンの男子に日本の半井重幸(ダンサーネーム・Shigekix)が出場したが、3位決定戦でビクター・ベルヌデス・モンタルボ(ダンサーネーム・VICTOR、アメリカ)に3-0(0-9、4-5、3-6)で敗れて4位に終わり、メダル獲得はならなかった。
日本からは半井重幸と大能寛飛(ダンサーネーム・Hiro10)の2選手が本大会に出場。いずれもグループAに入り、上位2名が決勝トーナメント進出となる予選リーグ3試合を戦った。
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半井は予選リーグの初戦でビクター・ベルヌデス・モンタルボと顔を合わせた。世界選手権を2度制覇したビクターに高難度なムーブで挑むも1-1(8-1、4-5)のドローに終わった。
続く大能との日本人対決で「パワームーブ」を繰り出す大能に巧みな技で応戦した半井は、2-0(9-0、8-1)で勝利し、決勝トーナメント進出を懸けてリウ・チンギ(ダンサーネーム。671、中国)との最終戦に挑んだ。リウ・チンギのアクロバティックなムーブに技の引き出しの多さで挑んだ半井は第2ラウンドで盛り返して1-1(0-9、9-0)とし、決勝トーナメント進出を決めた。
準々決勝では、オランダのメノウィルヘルムス・ヘンリカス・ファンホルプ(ダンサーネーム・MENNO)と対戦。フリーズやヘッドスピンを取り入れた完成度の高いパフォーマンスを披露して3ー0(9-0、6-3、7-2)で勝利し、準決勝へと駒を進めた。
準決勝では、半井が世界選手権で過去に2度敗れたことがあるフィリップ・キム(ダンサーネーム・PHIL WIZARD、カナダ)と対戦。スピード溢れるパフォーマンスで観衆を魅了したものの、独創的な振りを得意とするフィリップ・キムに0-3で敗れて決勝進出を逃した。
銅メダルをかけた3位決定戦は、予選で引き分けたビクターとの再戦となった。半井は「パワームーブ」や「フリーズ」を武器に会場を沸かせるも、0-3で敗戦。大会を4位で終え、あと一歩のところでメダルを逃すこととなった。
予選
1対1(8-1、4-5)対ビクター・ベルヌデス・モンタルボ(VICTOR、アメリカ)
2対0(9-0、8-1対大能寛飛(Hiro10)
1対1(0-9、9-0) 対 リウ・チンギ(671、中国)
決勝トーナメント(決勝トーナメントでは3Rの戦いによって勝敗が決められる)
準々決勝
3対0(9-0、6-3、7-2)対メノウィルヘルムス・ヘンリカス・ファンホルプ(MENNO、オランダ)
準決勝
0対3(0-9、3-6、2-7)対フィリップ・キム(PHIL WIZARD、カナダ)
3位決定戦
0対3(0-9、4-5、3-6) 対ビクター・ベルヌデス・モンタルボ(VICTOR、アメリカ)
大能寛飛(Hiro10)
予選
0対2(0-9、3-6)対リウ・チンギ(671、中国)
0対2(0-9、1-8)対半井重幸(Shigekix)
0対2(1-8、3-6)対ビクター・ベルヌデス・モンタルボ(VICTOR、アメリカ)
卓球女子団体 早田ひな、平野美宇、張本美和(銀メダル)
早田ひな、平野美宇、張本美和の3名で構成された卓球女子日本チームは団体戦に出場。決勝で五輪4連覇中の中国に敗れたものの銀メダルを獲得し、同種目では4大会連続でメダルを手にすることとなった。
1回戦対ポーランド 3勝0敗
初戦でポーランドと対戦した日本は、第1試合のダブルスで早田・平野組が1ゲームを取られたものの3-1で勝利。続くシングルマッチでも張本と平野が危なげない試合運びでストレート勝ちし、3勝0敗で準々決勝進出を決めた。
【戦績】
○第1戦ダブルス早田ひな・平野美宇組対ズザンナ・ビエルゴスナタリア・バヨル組 3対1(11-5、5-11、11-9、12-10)
○第2戦張本美和対アンナ・ベングジン 3対0(11-7、11-4、11-4)
○第3戦 平野美宇対&ナタリア・バヨル 3対0(11-3、11-6、11-6)
準々決勝対タイ 3勝0敗
準々決勝ではタイと対戦した。初戦のダブルスを危なげなく勝利した日本は、2試合目の張本が7連続ポイントの圧倒的な攻撃を見せ、タイに1セットも取らせずに3試合で準決勝進出を決めた。
【戦績】
○第1戦ダブルス早田ひな・平野美宇組対スタシニ・サウェタブット、オラワン・パラナン組 3対0(11-7、11-6、11-5)
○第2戦 張本美和対ジニパ・サウェタブット3対0(12-10、11-5、11-9)
○第3戦 平野美宇対オラワン・パラナン3対0(11-8、11-5、11-6)
準決勝 対ドイツ 3勝0敗
準決勝ではドイツと顔合わせ。早田・平野組がシャオナ・シャン、ユアン・ワン組と対戦したダブルスでは、ゲームカウント1-1で迎えた第3ゲームを11-9でものにすると、第4ゲームでデュースにもつれたゲームを12-10で制し、ゲームカウント3-1で勝利した。
第2試合は張本が0-3でストレート負けを喫すも、第3試合に平野がストレート勝ちで流れを呼び込み、第4試合では張本が勢いそのままの8連続ポイントでストレート勝ち。3勝1敗でドイツに勝利して2大会連続の決勝進出を決めた。
【戦績】
○第1戦ダブルス
早田ひな・平野美宇組対スタシニ・サウェタブット、オラワン・パラナン組 3対0(11-7、11-6、11-5)
○第2戦張本美和対ジニパ・サウェタブット3対0(12-10、11-5、11-9)
○第3戦平野美宇対オラワン・パラナン 3対0(11-8、11-5、11-6)
決勝対中国 0勝3敗
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決勝で日本は、女子シングルスを制した陳夢(チェン・ムン)、2大会連続銀メダルの孫穎莎(ソン・エイサ)、日本人選手に高い勝率を誇る王曼昱(ワン・マンユ)の3選手を擁し、五輪5連覇を目指す中国と対戦した。
陳夢・王曼昱組と対戦した平野・早田組は、第3ゲームに6連続ポイントを奪って11-6とし勝利まであと1ゲームと迫ったが、陳・王組の力強い攻撃に対応できずに第4、第5ゲームを落として、2-3で競り負けると、シングルスでも平野と張本が相次いで敗れ、0勝3敗でストレート負けを喫し、金メダルを獲得することはできなかった。
【戦績】
●第1戦 ダブルス
早田ひな・平野美宇組対陳夢・王曼昱組 3対2 (11-9、6-11、11-6、6-11、10-12)
●第2戦 平野美宇対孫穎莎 0対3(11-13、6-11、6-11)
●第3戦張本美和対王曼昱1対3(14-12、10-12、7-11、6-11)