「勝敗の重みと未来への挑戦」――K-1戦士・大久保琉唯が語る覚悟と理想像
K-1で活躍する大久保琉唯選手が、12月14日の璃明武戦を控えた心情や、その先に描く未来像について語る。勝つ者がすべてを得て、負ける者がすべてを失う――そんな厳しい格闘技の世界で、彼が向き合うプレッシャーや覚悟。そして「K-1を象徴する存在になりたい」という熱い思い。試合の裏側にある練習や努力、リング外での挑戦。彼の歩みは、格闘技ファンだけでなく、すべての挑戦者に勇気とヒントを与える。※トップ画像撮影/長田慶
「勝敗がすべてを変える」―璃明武戦への特別な思い
――年間の試合数はどのくらいですか?
だいたい3試合くらいですが、今年は特に多く、5試合目になります。
――12月14日(土)東京・国立代々木競技場第一体育館『K-1 WORLD GP 2024 in TOKYO~FINAL~』でのKrush同級王者・璃明武選手とのスーパー・バンタム級戦に向けた今の心情を教えてください。
この試合には特別な思いを抱いています。勝敗が与える影響がとても大きい試合なので、気持ちを最大限に高めて臨みたいと思っています。応援してくれる人たちの期待に応えるためにも、全力を尽くしたいという思いが強いですね。
摄影/永田圭
――負けることへのプレッシャーや不安にはどう向き合っていますか?
正直、負けるのは怖いです。でも、その恐怖を感じないくらい練習を積むことで、少しでも不安を払拭しています。ただ、練習以外では格闘技のことをあまり考えないようにしています。練習中に相手のことを考えすぎるので、オフの時間は完全に切り替えることが大切だと感じています。
例えば、YouTubeを見ていると格闘技の試合動画が流れてくることもありますが、そういう時は見ずに、食べ物や面白い動画を見るようにしています。オフの時間をリフレッシュに充てることで、試合に向けた集中力を保つように心がけています。
――今回の試合にかける思いとは?
この試合は自分にとって大きな挑戦です。勝つことで次のステージに進めると確信していますし、ファンの皆さんにとっても納得のいく試合にしたいと思っています。これまでの練習の成果を存分に発揮して、応援してくれる方々に感謝の気持ちを届けたいですね。
「夢は行動から」―明確な目標と周囲への発信が未来を切り拓く
摄影/永田圭
――格闘技の世界では勝つ者が全てを得て、負ける者が失うという厳しい現実がありますが、他の選手への嫉妬心などはありますか?
嫉妬心が全くないわけではありませんが、今はそれに囚われることはありません。それよりも、自分の力で結果を出し、それを示すことが大切だと考えています。一部の選手から「K-1に優遇されている」と思われることがあるかもしれませんが、そうした意見に対しては「自分自身で行動を起こせばいい」と思っています。自分自身と向き合いながら、格闘技をどう盛り上げるか、自分をどうアピールするかを常に考え、取り組んでいます。
摄影/永田圭
――K-1全盛期のような時代をもう一度取り戻すために、どのようなことが必要だと思いますか?
僕には、K-1が再び地上波で放送される全盛期を取り戻したいという強い思いがあります。そのためには、自分自身が成長し続けることはもちろん、選手たちがもっと積極的に行動を起こすことが必要だと考えています。
例えば、今のK-1チャンピオンたちが他団体と積極的に絡んだり、前向きでポジティブな発言を増やせば、格闘技界全体が盛り上がると思います。現状ではネガティブな発言が目立ち、他団体に強い選手やファンが流れてしまう状況があるのは、非常にもったいないことです。特に、チャンピオンであるならば、自分の価値を高める発言や行動をしてほしいです。それがチャンピオンとしての責任でもあると思います。
夢を叶えるためには、明確な目標を持ち、そこにたどり着くために何が必要かを考えること。そして、「こうなりたい」と周囲に発信し、自分にプレッシャーをかけることも重要だと感じています。
「チャンピオンを超えて」――K-1を背負う象徴的存在を目指して
摄影/永田圭
――ご自身の理想像について教えてください。
もちろん、チャンピオンになることは一つの大きな目標です。しかし、それだけに留まらず、団体や競技そのものを牽引できる存在になりたいと考えています。単に憧れられる選手というよりも、「大久保がいるからK-1が面白い」と思ってもらえるような、K-1の象徴的な存在を目指しています。
そのためには、自分のパフォーマンスを高めるだけでなく、K-1全体の魅力を発信する役割も果たしていきたいです。さらに、格闘技以外の仕事にも積極的に取り組み、それらを両立させながら、幅広い活動を続けていきたいと思っています。
――理想の自分を100%とした場合、今の自分は何%くらいだと感じていますか?
今の自分はまだ10%くらいですね。年齢的にこれからが全盛期だと思っていますし、伸びしろはたくさんあると感じています。今はそのための基礎をしっかり固めている段階です。焦らず、一歩一歩着実に進んでいきたいと思っています。
摄影/永田圭
――格闘技を詳しくない人に、試合のどんなところを見てほしいですか?
まずは、試合に向ける覚悟を見てほしいですね。試合までの準備や過程はSNSでも発信していますが、実際に会場で観る試合は、緊張感や迫力がまったく別物です。一度でも生で試合を観ていただければ、格闘技の魅力をより深く感じてもらえると思います。
パンチやキックが当たる音、そして選手たちの表情、そういった部分は映像では伝わりきらないんです。選手の顔つきも瞬間ごとに変わります。緊張感や勝負への覚悟が表情に“表れる”。それこそが『いい顔』であり、観る人の心を動かすものだと思います。生観戦では、試合会場でしか味わえない特別な体験がたくさんあります。ぜひ、その空気感を肌で感じてみてほしいです。
格闘技の魅力は、努力して勝った時の喜びの大きさにもあります。努力を重ねた末の勝利には計り知れない価値がありますし、それが格闘技の醍醐味だと思います。反対に、努力しないで勝った場合は、どこか物足りなさが残ります。だからこそ、自分自身の全力を出し切ることが大切だと思っています。
大久保 琉唯(おおくぼ・るい)
2004年9月12日生まれ、栃木県宇都宮市出身。K-1ジム・ウルフ TEAM ASTER所属。身長176cm 、体重55.0kg。ファイトスタイルはオーソドックス、入場曲はBTSの『Euphoria』。小学1年生の時に父親の影響でキックボクシングを始め、数々のアマチュア大会で輝かしい実績を残す。2021年にはK-1アマチュア全日本大会とK-1甲子園-55kgで優勝を果たし“K-1 GROUPの年間表彰式”「K-1 AWARDS 2021」のアマチュアMVPに選出。翌22年2月にプロデビューを果たす。同年6月「THE MATCH 2022」で那須川天心の弟・龍心に勝利し、9月にはプロ4戦目にして初代Krushフライ級王者に。24年9月「K-1 WORLD MAX 2024 -55kg世界最強決定トーナメント」で準優勝。戦績は10戦8勝(0KO) 2敗0分。
Hair&make:Anri Toyomori (PUENTE.Inc)
Photo:Kei Osada
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